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エッフェル塔からもわりと近いカフェ・デュ・コメルスの看板を見つけるには、上を向いて歩く必要がある。入口はあまり大きくないものの、ドアを開けて廊下を進むと、光に満ちた空間があるのに驚かされる。カフェ・デュ・コメルスは中庭と2つの階の回廊からなる迫力あるブラッスリーだ。この店は100年前から存在し、内装は1920年代〜30年代のスタイルを保っている。 100年を超える歴史があるものの、この場所は今でも活気に満ちている。客席に聞こえてくるのはレストラン全体の活気である。いくつもの前菜をお盆に載せて運ぶギャルソン。装飾された店内の柱やワインレッド色のベルベッドの長椅子。パリのビストロらしいトーネットの曲木椅子。真鍮製の大きなシャンデリアに古いポスター、心地よい時を楽しむ客たちの声。 この店に足を踏み入れるとすぐに、ここはいい店だとわかるだろう。カフェ・デュ・コメルスではかつてのブラッスリーのようにギャルソンたちが重要な役割を果たしている。彼らは大きなお盆を持って忙しく動き回っているものの、お客を笑顔にする一言を忘れない。 カフェ・デュ・コメルスではパリのブラッスリーならではの伝統的な料理が楽しめる。 前菜には「ゆで卵のマヨネーズソース」「オニオン・グラタン・スープ」や名物の「ブルゴーニュ産天然エスカルゴ」。メインには、「南西地方の鴨のコンフィ、パセリポテト添え」「タルタルステーキ、自家製ポテトフライ添え」などがおすすめだ。お魚好きの人には、「フィッシュ&チップス、タルタルソース添え」「スズキのグリル…

ル・パルルーはセーヌ川の近くの新しい商業施設、ボー・グルネル・パリからすぐの、色とりどりでお洒落なビストロ。美味しいものがたっぷり食べられるので、この界隈でも人気のお店。 パルルーはデニズさんと甥のエイメリックさんによる経営。二人ともオーベルニュ地方にある標高千メートルの火山台地、オーブラックの出身です。この美しい地域の名前は、この地域固有の牛の名前にもなっています。オーブラック牛はこだわりシェフたちに重宝される、柔らかさと味わい深さが評判の肉。ル・パルルーが勧めるお肉はもちろんオーブラック牛。牛フィレをゆっくりかみしめるもよし、空腹時には2人前で1kgの骨付き肉に挑戦するという方法も。 …

東京で最もフランスに近い神楽坂には、フランス料理店やビストロがひしめきあっている。そんな中でもダントツにフランス気分に浸れるお店が、ビストロ・ル・パリジャンだ。店内ではフランス語が飛び交っており、扉を開けると異世界に紛れ込んだよう。 とはいえビストロ・パリジャンの良さは単にフランス的な雰囲気が味わえるだけではない。何より驚きなのはリーズナブルな価格設定なのに、食事はボリューム満点で、どれも絶品だということ。一度この店に行ってしまうと、他の店をあえて選ぶのが難しい。それほどにコスパが高く、間違いのない店なのだ。 東京広しといえども、やたらと高級なフレンチか、ビストロという名のもとに単なるボリューム勝負になっている店の多い中、なぜこの店はリーズナブルな価格で質の高い料理を提供できるのだろう? フランス語と日本語で気さくにコミュニュケーションをとるオーナーのナビルさんは、パリの老舗カフェ、クローズリー・デ・リラで8年にわたってメートル・ドテル(給仕長)を勤めていた人物だ。クローズリー・デ・リラは20世紀初頭の世界中の芸術家や、ヘミングウェイが通ったことで知られる店。ナビルさんが勤めていた頃のクローズリー・デ・リラはパリでトップのレストランとして名をはせ、大統領や著名人が次々とやってくる店だった。クローズリーやホテル・ムーリス、タイユバンなどのシェフと共に働き、サービスの腕を磨いたナビルさんは、日本人女性と結婚したことを機に来日する。 その後、フランスに旅行した気分なれる店を作りたいとの想いで、2013年にビストロ・パリジャンをオープンした。それゆえ、この店は何もかもがフランス式で本格的。たとえば鴨のコンフィは日本では鴨の脂以外で調理されることが多いそうだが、この店では高くても鴨の脂にこだわりつづける。長年パリの一流店でシェフと働いてきたナビルさんは、肉の微妙な焼き加減にもこだわりが強い。だからこそ、マグレ・ド・カナールは血が滴るほどではない絶妙なロゼで、側面はカリッと焼き上げられた絶品となる。…

ル・ブイヨン・シャルティエは、パリのエスプリとは何かを伝えてくれる歴史的な店。グラン・ブルヴァール近くの店のに前は、シャルティエ独自の雰囲気を楽しみにしている人たちで日々行列ができている。この店に入ったら、常連客達が自分のナプキンを取り出すという有名な引き出しなど、店内をじっくり眺めてみるといい。ギャルソン達が文字取り駆けぬけながら、客席の紙のテーブルクロスに注文を書き付ける姿を眺めているのも楽しいものだ。 …

ウェプレールはパリの歴史あるブラッセリー。モンマルトルの丘の麓、クリシー広場に面した場所で100年以上続くこのブラッセリーは、画家のピカソやロートレック、マリー・ローランサンにシュザンヌ・ヴァラドン、それに詩人のアポリネールやアメリカ人のヘンリー・ミラーのような小説家たちが好んで訪れる場所でした。 ヘンリー・ミラーは小説『クリシー広場の静かな日々』で、ウェプレールについて書いています。「クリシー広場の横にあるカフェ、ウェプレールは長いこと私のお気に入りの場所だった。私はいつも店内かテラスに腰をおろしていた。私にとってこの店は1冊の本のような存在だった。ギャルソンやディレクター、会計係や売春婦たちや常連たちの表情、それにトイレ係のおばさんの表情に至るまで、まるで毎日読んでいた本の挿絵のように私の脳裏にしっかりと刻み込まれているのである。」 ブラッセリー・ウェプレールにはセルジュ・ゲーンズブールや娘のシャルロット・ゲーンズブールも頻繁に訪れました。現在でもアーティストや映画関係者たちを惹き付け、彼らの出会いの場として機能しています。というのもこの店には、他の場所では感じることのできない、昔から変わらぬ独特の雰囲気があるからです。 1976年にこの店の事業を引き継いだオーベルニュ地方出身の父の跡を継いだミッシェル・ベシエール氏は、ウェプレールのエスプリを大事にしています。彼はこの店の文学賞、ウェプレール賞まで創設。ウェプレールは大多数のブラッセリーが、巨大な外食産業に買収されていってしまったのに対し、パリで数少ない独立経営のブラッセリーとして営業を続けています。ギャルソンや彼らが持つトレーの絶え間ない動き、個人客や仲間内でやって来た人たちでここは活気に満ちています。ここにいる人たちの表情や姿勢を見ていると、ウェプレールがパリの社会を観察するのにもってこいだとわかります。 ブラッセリー・ウェプレールは海の幸を愛する人たちにとって最もおすすめのアドレスの1つ。100年以上も前から、この店の海の幸の盛り合わせは評判でした。特に牡蠣のセレクトが評判で、マレンヌ・オレロンか、ブルターニュかノルマンディの牡蠣を使用。それからムール貝や、オマール海老や海老、ウミザリガニなども。全部味わってみたい方には、海の幸の盛り合わせがおすすめで、牡蠣、イチョウガニ、ウミザリガニ、灰色の海老や赤い海老、アサリなどが含まれています。…

7月11日に撮影されたパリ、ルーブル美術館の向いにあるパレ・ロワイヤルやシャトレ周辺のカフェの様子を動画にしました。束の間のパリ気分、味わってみませんか? 関連記事 ルーブル美術館周辺のおすすめビストロ マレ地区のおすすめビストロ・カフェ カフェの歴史、社会的役割を知るなら『カフェから時代は創られる』

パン職人のジャン・リュック・プージョラン氏は、お店こそ出していないものの、 専用のオーブンで毎日パンを焼いています。彼のパンはパリの上質なビストロやレストランで味わうことができ、その数は約250軒にも上ります。 ミシュランの星を獲得した有名シェフ、ギ・サヴォイ氏やロスタン氏のような店だけでなく、パリの10軒以上の高名なビストロ、例えばガレリアやプティ・トノーのような店にもパンを卸しています。 ワインの味をブドウが左右するように、美味しいパンを作るためには小麦粉が重要。プージョラン氏のパンは、漂白していない小麦粉を石臼でひき、水中の97%の塩素を濾過する機械を使って、無臭にした水を使用。それから1つまみ加える塩は、ビオマークのゲランドの塩。 プージョラン氏は、フランス南西部のパン屋の息子で、30年前にパリに上京。今でも彼は父親から受け継いだ酵母を使ってパンを作ります。パン生地を完成させるまでの間、生地を2回発酵させます。手で細工をした後は…

ル・ムートン・ブランはパリの西側、ブローニュの森とエッフェル塔に近い美しい地区、オートゥイユ通りにあります。ここはパリの中で最も古い建物のうちの1つで、歴史あるレストラン。モリエールやラシーヌ、ボワローやラ・フォンテーヌのような数多くの劇作家たちが食事をしに来ていた店なのです。 2008年に全く新しいインテリアに改装したムートン・ブランは、雰囲気は少し変わったものの、店の心意気を失うことはありません。古い石材には、様々な色調の金や銅の色が塗られ、この店の有名な客達の肖像画が飾られています。店内は3つの空間に分けられていて、それぞれ雰囲気が異なります。小さな丸テーブルに、お洒落な肘掛け椅子のある空間、また、親密さが感じられる空間、それからクラシックなタイプの長椅子とテーブルのある空間です。 ここではクラシックなフランス料理が味わえます。自家製の田舎風テリーヌに、ピュイのレンズ豆をメインの前に味わってみるのもいいでしょう。マグレ・ド・カナルや牛タルタルステーキ、子牛の腎臓料理のマスタードソースなどがこの店のおすすめです。デザートは自家製で、クレープ・シュゼットやセントジェームスのラムで香りづけされたババなどが、特にお客さんに愛されています。 ル・ムートン・ブラン Le…

日本にはパリの情報が溢れてる。レストラン、パティスリー、ブランジェリー、パリジェンヌの生き方に至るまで、これでもか、というくらいにガイドの類が存在する。だが掲載されている情報が必ずしも本当のパリを映し出しているとは限らない。 パリに着き、有名雑誌やガイドが謳う店に足を踏み入れると、驚くことにそこはパリではないかのようだ。ガイド片手にやってきた世界中の観光客、流暢な英語を話す店員たち、そして目を疑いたくなるような高価な値段がそれらの店の特徴だ。パリのビストロに来たはずなのに、ニューヨークにでも来たのかと思うほどインターナショナルな店内にはパリジャンたちの姿はあまり見受けられない。それもそのはず、彼らはそんな店にはほとんど行かないからだ。 その理由の1つは高すぎて、コスト・パフォーマンスが悪いこと。何故「ラザール」の朝食は、クロワッサンとジュースとカフェ・オ・レだけで10€もするのだろう?クロワッサンはサクサクで素晴らしいかもしれないが、何故か紙袋に入って提供されるのも興醒めだ。オデオンにある有名店、「コントワール・デュ・ルレ」のメインは昼でも1皿20-25 €前後だが、この値段を出せば多くの店では前菜かデザートも食べられるし、特に感動するほどの味わいというわけでもない。観光客でごったがえす店内ではギャルソンは注文をしっかり把握する余裕すらみせられない。ビストロとして著名な「ポール・ヴェール」や「シース・ポール・ヴェール」は土曜には1皿25€の予算では何一つ食べられない。 そんな値段をパリジャンたちがさらっと払えるかといえば、答えは「ノン」に決まってる。だからこうした店は本当に特別な時にしか使われないが、こだわりのあるパリジャンたちが特別な時にお金を払うなら、もっと観光客が少ない自分好みの店を選ぶだろう。そういうわけで、これらの店に入るのは大抵がガイド片手の観光客と、田舎から上京してきたフランス人、そしてそんな店に普通に入れるスノッブなパリジャン、という構図になってしまう。そんな人が多くなると店員も上から目線で注文をとってただ運べばいいという感じになりがちで、店の雰囲気も心地よいものとはいえなくなる。常連客を大切にする個人経営の店と、一見の観光客が集まる慌ただしい雰囲気の店とでは、同じお金を払ったところで得られる満足感には雲泥の差があるものだ。…

東京に飲食店は星の数ほどあれど、リーズナブルで本当に美味しいフレンチを見つけるのは至難の技だ。広尾の「ラ・トルチュ」はそんな類い稀な一軒で、スープを一口味わっただけで、この店は違う、というのが伝わってくる。とうもろこしの冷製スープの複雑で繊細な甘み、アクセントになる塩気の効いたベーコンとの抜群の相性の良さ。これは凄い・・・という驚きは有難いことにデザートまで続いてくれる。肉の焼き加減からクレームブリュレの表面のパリパリ感に至るまで、すべてが絶妙という他なく、フランスで美味しいものに出会った時の湧き上がるような喜びが、東京に居ながらにして味わえる。 「ラ・トルチュ」は見た目は小さな個人経営のレストランだが、実はパリでも高名な日本人シェフ、吉野建氏の店だと聞けばこの質の高さに納得がいく。吉野氏が監修するフレンチが東京に3軒ある中で、「ラ・トルチュ」は一番カジュアルなビストロで、ランチは2400円から、ディナーは4200円からと、値段もいたってリーズナブルだ。 この店で腕をふるうのはパリでの修行後、タテルヨシノで5年間働いてきた猪口玄洋シェフ。「ラ・トルチュでは、テロワールを感じられる料理、つまり自然や大地を意識し、食材や伝統も大切にした料理を提供するように心がけています。素材をあまり複雑にしずぎず、食材に敬意を抱いて、気持ちをこめて料理をしています。」そんな猪口シェフが今情熱を注いでいるのが前菜の「季節の野菜と穀物のテリーヌ50」だ。こちらは50種類もの野菜や穀物をびっしり詰め込んだテリーヌで、食べただけで肌がツヤツヤしそうなほど健康的。もやしやごぼう、オクラなど、1つ1つの味わいはハッキリと個性が異なっており、複数の野菜を口に含んだ時にはじめて味わいが重なりあって溶けていく。それもそのはず、「野菜はゆで時間が違うので1つずつ茹でるんです。この下ごしらえだけで1時間半くらいかかったこともありました」とシェフ。大変でもあえてその手間を惜しまないことで、素材の持ち味が存分に伝わる料理になるのだろう。 前菜には牛タンのスモークとフォワグラのムースをミルフィーユ状に重ねた「牛タンとフォワグラのルクルス」も人気がある。こちらも少し口に含んだだけで、どれほど丁寧に作られているかが伝わってくる。とろりとした牛タンと、クリーミィでコクのあるフォワグラのムースの異なる個性が口の中で混ざり合い、絶妙なハーモニーを醸し出していく。 メインのおすすめはスコットランド産のサーモンをオーブンで数分だけ焼いた「サーモンのミキュイ」。脂がのってとろりとしたサーモンが非常に柔らかく、優しい味わいで、エシャロットやディルが入って少しピリッとしたクリームと見事に調和。他にもパテ・アン・クルートや、秋から冬にかけてはイノシシ、野鳥、鹿などのジビエも堪能できる(サーモン以外は基本的に夜のコース)。…