ワイン好きなら誰もが一度は訪れたいと願うボルドーに、ワイン博物館が2016年に誕生した。9階建ての巨大な博物館はまさにワインの殿堂といえる場所。ボルドーワインについてだけでなく、世界中のワイン産地や歴史についてじっくり学ぶことができる。

世界中のワイン愛好家が一度はボルドーに行きたいと夢見るものの、この博物館が誕生する以前にはボルドー市内で一般人がワインについて学べる場所はほとんど存在しなかった。そんな事情に驚いたアラン・ジュペ前ボルドー市長のリーダーシップのもと、ボルドーを代表する博物館が完成した。

黄金色をした博物館の独特の形はグラスの中でのワインの動きや、ブドウの樹のうねりを表し、博物館の中を円のように回遊していくことで、来場者もその動きを感じられるという。博物館は9階建てで、常設展は2階と3階に広がっている。チケットには川に面したパノラマが広がるベルベデーレへの入場料も含まれ、そこでは15種類の世界のワインの中から一種類試飲ができる。

常設展以外にも企画展会場があり、著者が来場した際にはピカソとワインをテーマに、数多くのピカソの作品が展示されていた。また、ワインのアトリエも定期的に開催されている。

常設展には順路がなく、来場者は自分のペースで好きな場所を見るようになっている。ワインと食文化、ボルドーワインの歴史、ワイン文明ギャラリー、五感のビュッフェなど19のテーマについての展示があり、オーディオガイドで自分の言語を選び、気になったテーマの前に機器をかざすと案内が流れてくる。日本語の音声ガイドもあり、Google翻訳とは違い、かなりまともな日本語で解説を聞くことができるからありがたい。

この博物館はボルドーにあるとはいえ、基本的には世界のワインを視野に入れ、グローバルな視点でワインの物語を伝えることを大切にしている。ワインと人、食との関わり、ワインがいかに芸術や文明と関連しあってきたか、古代エジプト時代から今に至るまで丁寧に解説されている。

とはいえ最も見応えがあるのは、やはりフランスワインに関わる箇所だろう。ボルドーというワイン産地がいかにイギリスやオランダの影響を受けて発展していったかという映画は何度見ても興味深い。
ここには五感のビュッフェという、五感を通してワインを感じるコーナーもあり、ワインを表現する香りを実際に嗅ぐことができる。ぜひ動画でその雰囲気を味わってみてほしい。他にも最近のワイン用語の解説や、ワインの瓶やコルク、保管方法の歴史的変化など、ワイン好きにとっては学ぶことが盛りだくさんの空間だ。

ボルドー市内にはワインショップはあまり多くないが、ここでは世界中のワインを購入することも可能。まるでミュージアムのような美しいワインショップは、一度訪れてみる価値がある。
ボルドーのワイン産地を訪れる際は、ぜひ3時間ほど時間をとってゆっくりと訪れてみてほしい。
ボルドー市内からトラムB線で直通。’Cité du Vin’下車。
ヴェルべデーレでの試飲付きのチケット21€
毎日10時からオープン