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フランス第2の規模を誇るAOCワイン産地、コート・デュ・ローヌはリヨンの南からアヴィニヨンまで、南北に約250㎞渡って広がっている。ローヌ川はリヨンの市街地を横切り、マルセイユの西で地中海に注ぐ広大な河川。この地でのワイン造りは、マルセイユがローマ帝国の植民地だった紀元前600年から始まり、北部でも1世紀にはワイン造りが始まった。 ローヌ川沿いに広がる産地は北部と南部に大別され、それぞれ8つのクリュ(特に秀でたAOCワイン産地)が存在する。「セプタントリオナル」と呼ばれる北部は、リヨンの南、ヴィエンヌ付近から始まり、ローヌ川沿いに「コート・ロティ」、「コンドリュー」、「サン・ジョセフ」「エルミタージュ」などの高名なワイン産地が続く。これら偉大なワインは赤の場合はシラー、白はヴィオニエやマルサンヌ、ルーサンヌという品種を使用。赤はもっぱらシラーといっても、AOCやテロワールごとに味わいは多様な表情を見せ、力強さだけでなく、うっとりするようなエレガントさを兼ね備えており、鴨や子羊、ジビエに至るまで、さまざまな肉料理と見事に調和する。北部のブドウ畑は立つのもやっとという急勾配のローヌ渓谷に段々に広がり、機械の使用が難しく、収穫はもちろんほとんどの作業が人力となる。そのため収穫量も限られ、値段も1本15€を超えることが多くなるが値段以上の深い味わいを楽しむことができるだろう。パリのほとんどのスーパーやワインショップでは「クロズ・エルミタージュ」や「サンジョセフ」など、北部のワインも扱っている。 一方、南部のアヴィニヨン周辺には、AOC「コート・デュ・ローヌ」や「コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ」が広がっている。こちらは主にカフェやビストロで気軽に楽しむタイプの若くてフルーティなワイン。リーズナブルで味わいが良く、パリのビストロで昔から愛されている。近年では特にカフェ、レストラン業界でローヌの赤ワインの需要が高まり、AOC「ボルドー」に続いてAOC「コート・デュ・ローヌ」は2位の地位を占め、約70%の店のワインリストに掲載されるほど。 とはいえ南部にも「ジゴンダス」、「ヴァケイラス」のようなクリュもある。特に有名なのは「シャトー・ヌフ・ド・パプ」で、1309年から1418年までアヴィニヨンに移住していたローマ法王の名にちなみ、「シャトー・ヌフ・ド・パプ(法王の新しい城)」という名になった。この地のワインラベルに天国の守護聖、サン・ピエールの鍵と教皇の紋章が描かれているのはそうした歴史的経緯によるものだ。「シャトー・ヌフ・ド・パプ」はパワフルでスパイシーさを感じるワインで、日本の百貨店のワイン売り場でも大抵は扱っている。 コート・デュ・ローヌでは、南に下っていくほど、シラーに加えて黒ブドウのグルナッシュやモルベードルが一緒に使われるようになる。「GSM」と呼ばれる、グルナッシュ、シラー、モルベードルの組み合わせはあまりに成功したため、オーストラリアでも再現されている。ローヌでは画一性を好まない生産者にも選択肢が多くあり、優しい味わいのサンソーやクノワーズはじめ、約20品種の使用がAOCで認められている。そのため、コート・デュ・ローヌは幅広いスタイルをもったワインとなり、愛好者に好まれている。また、ローヌの白は全生産量の7%とはいえ、繊細で複雑な味わいがあり、高級フランス料理に合わせるのに優れたワインとして重宝されている。…