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アルザスはフランスの北東部でドイツと国境を接する地方。歴史的に豊かな鉱物資源を求めてフランスとドイツとの戦いが続き、あるときはフランス領、あるときはドイツ領となっていた。伝統的な家屋の造りは赤、黄、青など色とりどりの外壁と、それを縦横に支える焦げ茶色の太い柱が特徴的で、家の外にはふんだんに赤い花が飾られている。 おとぎ話から出てきたような可愛らしい街並の背景をよく見るとブドウ畑が広がっている。アルザスはフランス屈指の白ワインの産地として有名で、ヴォージュ山脈の丘陵地を約100キロに渡り、ブドウ畑が続いている。フランスで一番降雨量の少ない産地としても知られ、それゆえビオ(有機栽培)ワインの生産量はラングドック地方に続いてフランス第2位。アルザスワインの特徴は白ワインがメインなこと、基本的に単一品種で造られており、品種名をラベルに記載すること、それからワインの瓶がフルート型で、縦に細長いことが挙げられる。 アルザスワインの良さは何と言っても日本の食との合わせやすさ。ボルドーやコート・ド・ローヌの赤ワインと異なり、ワインのためにメニューをあれこれ考える必要もなく、普段の食事にさらっと馴染む。AOCアルザスで使用が許可されている7つの品種の中で、特に有名なのはリースリングでキリッとした酸が特徴的だ。日本の大抵のワインショップではアルザスのリースリングが1本は置かれている。とはいえ何もアルザスはリースリングだけに限らないし、リースリングも酸が特徴的なものだけとは限らない。アルザスにはよりレベルの高いワインを生み出す「グラン・クリュ」という特級畑が51カ所存在している。「グラン・クリュ」のリースリングは味わいもより豊かで丸みをおびて、特別な日の料理と合わせるのにもってこい。ほんのり香ばしい香りが特徴的なピノ・グリは和食にも軽めのフレンチにも合わせやすく、是非おすすめしたい品種の1つ。華やかでエキゾチックなアロマが特徴的なゲヴェルツトラミネールは、エスニックな料理や揚げ物にも向いている。 アルザスで伝統的に造られてきた瓶内二次醗酵のスパークリングワイン、「クレマン・ダルザス」は、フランスの発泡酒市場においてシャンパーニュについで第2位の売上高を誇る。「クレマン・ダルザス」は日本ではあまり馴染みがないものの、キリッとしたシャープな酸が喉の乾きを癒し、心地よい気分にしてくれる。コストパフォーマンスが高く、品質の優れたものが多いので、見つけたら是非一度試してみてほしい。フランスでは簡単に手に入るので、ちょっと贅沢気分を味わいたい日におすすめだ。ブドウ品種は白のクレマンではピノ・ブラン、オーセロワなどを使用。ロゼの場合はピノ・ノワール100%。…

アルザス地方のリボヴィレは、ストラスブールとコルマールの間に位置する、アルザスワインの中心地として栄えた街だ。色とりどりの花が迎える、おとぎ話のような街に到着するとすぐ、カーヴ・ド・リボヴィレの看板が目に飛び込んでくる。 街のすぐ横の醸造所からは開栓したてのシャンパーニュのような香りが漂っている。ブドウ収穫真っ最中のこの時期はトラックで次々とブドウが運び込まれ、すぐにプレスにかけられる。 カーヴ・ド・リボヴィレは、アルザス地方で最も歴史ある1895年創業のコーペラティブ。コーペラティブというのはブドウ農家が共同出資して醸造設備を購入し、各農家が収穫したブドウをまとめて醸造を行うシステム。コーペラティブはフランス全土に存在し、シャンパーニュでもメジャーなスタイルだが、消費者はコーペラティブと聞くと低く見積もりがちになる。だがカーブ・ド・リボヴィレのワインはそんな先入観を見事に覆してくれる。「うちのワインのコストパフォーマンスの高さは保証しますよ」と社長のイヴさん。2011年にアルザスの最優秀コーペラティブとして選ばれただけあり、カーブ・ド・リボヴィレのワインは味わい深く、ワインが語りかけてくる。 これからピノ・グリを収穫するというグラン・クリュ、グルットルベルグのオルリーさんの畑に向かう。ブドウ畑のある小高い丘の上からは、数々のブドウ畑と教会が見え、まさにアルザスという感じ。目の前にはピノ・グリが熟しているが、収穫は明日まで待つという。イヴさんは「カーブ・ド・リボヴィレのブドウの収穫はこのあたりで一番最後。酸と糖分が素晴らしいバランスになるギリギリのところまで待って収穫するんです」と語る。素晴らしいワインを造るには最高の状態のブドウを収穫することが欠かせない。生産者の頭を悩ませるのは、いつ、どのタイミングで収穫するか。もし待った日に雨が降ったら?オルリーさんはタイミングをどう計るのか教えてくれる。「こうやって畑のブドウを前後左右、適当にいくつか摘んで、容器に入れて潰します。それから器具に液を入れて濃度を計ります。どう、数値が見えるでしょう?アルコール度数が11,5℃以上になったら収穫可能なんですよ。」小雨の降る中、明日収穫する人がやりやすいように、とオルリーさんはブドウの房にかかる葉を黙々とカットし続ける。…