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赤ワインを飲みたい時、何と合わせたらいいだろう?肉料理、わかってはいても作るのは面倒くさい。そんな方にピッタリなのがシャルクトリ。シャルクトリとはハム、サラミ、パテなどの肉加工製品のことで、アペリティフや赤ワインのお供に最適だ。 シャルクトリはフランスのスーパーで簡単に手に入るとはいえ、感動するほど美味しいことはごく稀だ。ところがボルドーのシャルクトリ・ボルドレーズの製品はどれも今までの思い込みを覆す程味わい深い。それもそのはず、こちらでは豚の飼育から最終的なパッケージングに至るまで、一貫したこだわりの下で品質の高い製品を作っているからだ。 シャルクトリ・ボルドレーズはボルドーにある従業員70人弱の中小企業。若々しくパワー溢れるアルノーさんが2000年に立ち上げた。彼は祖父の代から豚農家で育ち、伝統的な飼育方法に愛着を持っていた。そのため今でもシャルクトリ・ボルドレーズが大切にするのは伝統的な飼育や昔からボルドー地方に伝わるシャルクトリのレシピ、そして徹底した品質管理。清潔感溢れる工場の熟成庫には人の大きさ程ある牛肉が吊るされており、加工場では巨大な肉が人の手でどんどんカットされていく。巨大な肉の固まりを間違いなく切り落としていく食肉加工職人たちはれっきとしたその道のプロ。「これからね、食肉加工職人の学校を作りたいと思ってるんですよ。肉の切り方とかをちゃんと教えてプロを育てる学校をね。」とアルノーさん。「これはね、この近くのレストラン用」と小さい単位の肉を別にとっておくなど、驚く程多種多様な肉製品がこの工場から生まれていく。 ぐらぐらと煮えたぎる鍋でブーダンをつくる一室もあれば、その隣は部屋全体が巨大な冷蔵庫のようになっており、できあがったパテやリエットなどが急冷される。その横からはできたての大きな骨付きハムが現れる。「はい、これ!」と渡されたハムの何て味わい深いこと!薄くピンク色がかったハムはこれまで味わったものとは比較にならないとろけるような味わいで、ハムというより柔らかいお肉のようだった。…

料理やガストロノミーの分野でさえ、フランス人は指標を見失うことがあるようだ。フランスでは調理済食品を卸業者から購入し、温めなおして提供する飲食店が増えている。そのため、フランス政府はメニューに自家製と表示する際、偽装しないことを義務づけた。この法律は完璧とまでは言えないが、来店した者はメニューに「フェ・メゾン(自家製)」の鍋マークが表示されていることで、それが料理人によって調理されたものだとわかる仕組みになっている。他のラベリングとして、シェフ達の仕事がきちんとしたものと評価されると与えられる、「メートル・レストラトゥール」という呼称がある。それ以降、彼らは自分の店のメニューは全て自家製だと言い張ることもできるのだ。 アラン・デュカスやヤニック・アルノのような偉大なシェフたちは、自らラベリングを創ることを選び、新たに「レストラン・ド・カリテ(質の高いレストラン)」というラベルを立ち上げた。とはいえ、またしてもラベルが増えるのは、フランスのガストロノミーを一層ややこしくするとは言えないだろうか。それに加え、彼らは自分たちと提携している生産者を認定する「アルティザン・ド・カリテ(質の高い職人)」というマークも創ったのだ。これでレストランの扉にますます多くのシールが貼られることになるが、それが消費者にとってわかりやすいとは言えないだろう。 偉大なシェフ達が質の良い生産物を大事にするとはいえ、彼らは巨大農産物企業にいつも立ち向かうわけではなく、共に仕事をすることさえある。フォワグラ、コーン、ブドウ畑に、遺伝子組み換え大豆で育った家畜など、小規模生産者の傍らには、自然を痛めつける大規模農業が存在する。フランスの農薬使用率は世界第3位となっている。その結果、蜂達が不気味な減少を続けている。フランス人は美しい風景と自然と美食文化とを上手く結びつけていないようだ。大規模集約型農業の問題については、残念ながら偉大なシェフ達からの声はあまり聞こえない。

フランスのレストランでは調理済み食品があまりに幅をきかせているため、2014年2月、フランス議会は自家製メニューの価値を高めるための法案を可決した。この法律は夏以降、レストランでのメニュー表示の際、店内で新鮮な食材を使って調理された料理名の横に自家製(fait maison)というロゴ表示を義務づけるもの。 [pro_ad_display_adzone id= »1569″]…