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コート・ド・ブールはあたたかい。日本の田舎に遊びに来たような、人間味を感じていられる出会いがある。そんな中でもシャトー・オー・ムソーは特にあたたかみを感じる場所だ。降りしきる雨の寒さも忘れるほどに、人のぬくもりに打たれてしまう、そんな真心を感じるシャトー。 10月初旬の醸造所はムワッとするほど醗酵の匂いで満ちている。醗酵中のタンクに耳をあてながら「ちょっと来て、耳をつけてごらんなさい。聞こえない?お父さん、ちょっと音をとめて!」と言って仕事を中断させて、静けさの中、ふつ、ふつと湧き上がるブドウの音色を聴かせてくれるオロールさん。「醗酵の音を聴くのが幸せなのよ~」とうっとりした表情でタンクに耳をあてている。こちらのブドウ畑を始めた父親譲りの、ワインに対する愛と情熱があるのが伝わってくる。シャトー・オー・ムソーの畑は3ヘクタールから始まって、今では33ヘクタールに広がった。ネゴシアンを通さずにできるだけ顔の見える相手に販売しようと、父のドミニクさんはドイツ語を学び、ドイツまで何度も交渉にいったそう。「それでね、うちの父は時間に厳しい方なんだけど、ドイツ人はもっと厳しくってね、5分遅れて行ったら『今度は5分前に来て下さい』って言われて追い返されたのよ」と笑うオロールさん。それでもめげないドミニクさんの努力によって、今ではドイツはよき仕事相手になっている。 [pro_ad_display_adzone id= »1569″] シャトー・オー・ムソーはまさに家族経営の小さなシャトーで、こぢんまりした空間に全ての設備が揃っている。試飲室の奥の扉を開けると、芸術的な絵柄の年代物のワインが並び、さらに奥にはラベルを貼る機械が設置されている。「よかったらやってみる?」とラベル貼りの機械を体験させてもらう。ブドウ栽培から醸造、瓶詰め、ラベル貼り、そして販売や発送に至るまで、ワインに関する全ての行程がここで、家族の手を通して実現される。ワイン生産者という仰々しいイメージとは違い、日本の小規模農家に近い雰囲気だ。日本でフランスワインを手にした時に目にする »Mis…

降りしきる雨の中シャトー・メルシエに到着すると、悪天候をものともせずに働き続ける人たちがいた。醸造所には収穫されたばかりのブドウを載せたトラックが到着し、ただちに選果が始まっていく。 選ばれたブドウの中にはオーク・チップがパラパラと投入される。「これは味ではなくて色のためなんです。今年はかなり大変な年で、皮がすでに痛んでいるとワインがいい色になりません。そんな時にはオークチップで色を定着させるんです。」と生産者一家のイザベルさん。 シャトー・メルシエは300年以上前からボルドーの右岸、コート・ド・ブールで続くシャトー。合計で48ヘクタールのブドウ畑をもち、環境に配慮した栽培方法、アグリクルチュール・レゾネを実践。悪天候な中で中心となり指示を出すのはイザベルさんの父親だ。お兄さんも醸造を担当し、イザベルさんは主にマーケティングを担当。「私はここで育ったんだけど、長いことアメリカのホテル業界で働いていたの。それで1年前に戻ってきたわ。」今は販売促進や輸出入を主に担当し、今でも年に4ヶ月くらいは海外で過ごしているという彼女。「20年前はここに戻ってきたいとは思わなかったけど、帰ってみたら、今の生活の方が100%いいって断言できるわね」と笑う。家族の他にも7人のスタッフがおり、収穫時にはいつも10人以上の大所帯で食を囲み、冗談を言っては笑い合っている。華々しい生活に区切りをつけ、家族の絆で結ばれて、しっかりと地に足のついた生活を心底楽しんでいる、そんな様子がうかがえる。 [pro_ad_display_adzone id= »1569″]…