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暑くなるにつれ、軽やかで心地よいワインが飲みたくなるもの。とはいえ手頃な価格でちゃんと美味しく、普段の食に合うワインを見つけるのは至難の技。安いスパークリングは味わいや泡がきつく、ボルドーの赤は夏には重く、ブルゴーニュは普段使いには高級で、フルーティするぎワインは食事の味を打ち消すことも。 そんな時に思い出してほしいのが、フランス、ロワール地方のワイン。7月7日、東京、白金台でフランス貿易投資庁主催のロワールワインセミナーが開催され、銀座のフランス料理店ロオジエのソムリエで、昨年の全日本優秀ソムリエコンクールで優勝した井黒卓さんがロワールワインの魅力を教えてくれました。 フランス東部、サンセールから大西洋に至るまで約1000キロにわたる広大なワイン産地のロワール地方。スパークリング、白、ロゼ、赤に至るまで個性豊かなワインを産出し、ロゼ・ダンジュや高級な白、サンセールなどで有名です。その中でもこれからの季節に重宝するのがスパークリングのクレマン・ド・ロワールと、カベルネ・フランの赤ワイン。どちらも上質でエレガントなフランスらしい味わいがあるのに、驚くほどリーズナブルという優れもの。 クレマン・ド・ロワールに使われているシュナン・ブランはロワール原産の白ぶどうで、シャープな酸味とリンゴ酸が特徴的。完熟すると、カリンやりんごの蜜のような味わいが生まれます。酸味がしっかりしているシュナン・ブランは、甘口ワインになっても酸味と甘みのバランスが優れています。霧の多いロワール地方は甘口ワインの産地としても有名で、皮の薄いシュナン・ブランに貴腐菌がつくことで上質な貴腐ワインが誕生します。 テイスティングに提供された「アッカーマン クレマンドロワール ビオ ブリュット…

ボルドーでワインを造る。それは豊かで美しい生き方だ。広大なぶどう畑に囲まれ、日々自然と触れ合える。食卓には高品質のワインが日常にあり、ワインを介して沢山の人との出会いに恵まれる。ワインを売り込むためには世界に目を向け、販売促進のために様々な国におもむく必要がある。自分の愛する土地にしっかりと根を張りながらも同時にインターナショナルであり、地道でありながらも華やかだ。ワイン造りは非常にやりがいがありそうな仕事だが、1つだけ大きな問題がある。それが天候不順である。 収穫間際のサン・テミリオンで、眩いほど美しい暮らしをしている生産者宅を訪れた際、彼らが時折空に目をやり、顔をしかめる場面があった。雷が鳴る。雨がもうすぐ降るのだろうか。降ってしまうと収穫は台無しになる。そのタイミングを決定するのは至難の技で、場合によっては一年の努力が無駄になる。人間だったら雨が降っても傘がさせるが、ブドウ畑は広すぎる。突然の豪雨やアラレなど、一瞬にして広範囲に影響を及ぼすものは、それが起こった直後に対処をしようとしてもほとんど追いつかないものだ。 世界中で異常気象が続くなか、このままではワイン生産者たちが気候変動に振り回されるのは自明のことである。一時的な対処療法がないのであれば、病気に負けない身体づくりをするように、畑の免疫力や自然治癒力を高め、気候変動に負けない畑づくりをするのが早道だ。10月24日、ボルドーワイン委員会の国際後方担当のセシルさんと、技術部門ディレクターのマリー=キャトリーヌさんが来日し、「ボルドーの持続可能なワイン造りを知る」というプレスイベントが開催された。現在、ボルドーのワイン業界は気候変動への対策に強く力を注いでいるという。2017年にはボルドーのぶどう畑の60%が、ビオやビオディナミ、HVE認証(環境価値重視認定)など、何らかの環境認証を取得し、ボルドーワイン業界は100%を目指している。これはビオワインが消費者の身体に優しいからというより、畑のまわりの生物多様性を強化し、畑全体の耐性を強くするという視点があればこその結果である。結局のところ、ブドウだけの成長を考え、生物多様性の少ない土壌や畑は自然災害への耐性が弱いのだ。 これまでブドウ畑といえば、上に挙げた写真のように、表面がカラッと乾燥し、ゴツゴツした小石が表面に出ているぶどう畑が主流だったが、今では下に載せた写真のようにボルドーの85%のぶどう畑の土の部分は下草で覆われ、様々な虫の住処となっている。また、農薬使用を減らすため、ぶどうの実に害を与えるハマキガを捕食するコウモリについての研究が進んでいるという。コウモリは一晩で約2千もの害虫を捕食するため、生産者たちはぶどう畑にコウモリの定着をすすめるための環境整備に取り組んでいる。農薬の使用に関しては、ボルドー、ボルドー・シューペリウールのAOC規定により、畑全体に向けて除草剤を使用することを禁じ、除草剤が使用できる場所を限定した。それだけでなく、今後の気候変動に対応するため、新たに気候変動に耐性があると思われる7品種をAOCの規定にいれることを許可。これらはあくまでも補佐的な品種とはいえ、「これだけ対策をしているから、100年後にも絶対ボルドーワインは生き残るわよ」とマリー=キャトリーヌさん。ボルドーといえば伝統的、というイメージが強力だが、ボルドーをよく知る二人によれば、実際は、ボルドーにおける伝統とは、時代に合わせて変化、適応していくものだという。戦後は様々な作物とともにブドウを育て、1980年ごろまでは白ワインがメインの産地だったように、ボルドーは刻々と時代に合わせて進化を遂げてきたからこそ、世界に誇るワイン産地であり続けることができたのだ。 65ものAOCをもつボルドーはその環境への取り組みも、トップクラスであろうと努力している。大西洋が近く、大河もあるため湿気の問題が根強いボルドーは、はじめから農薬不使用の栽培に適したような場所ではない。だからこそ、ここでの困難の乗り越え方や研究成果は、今後フランスだけでなく、多くのワイン産地に影響を与えていくことだろう。下草が生え、蜂や蝶が舞うブドウ畑は楽園のように美しく、心洗われる光景だ。食の遺産を守るために私たちができることは何なのか、フランスきってのワイン産地、ボルドーから学ぶことはまだまだ沢山ありそうだ。(下草の写真はボルドーワイン委員会提供)

カーヴ・ド・タンは、1933年の創業以来、品質の優れたワインを作り続け、フランストップクラスのコーペラティブとして知られている。コート・デュ・ローヌ北部のエルミタージュや、サン・ジョセフ、クロズ・エルミタージュなどに畑を持ち、総面積は合計1000ヘクタールと広大だ。カーヴ・ド・タンの醸造所はあの高名なワイン産地、エルミタージュのまさに麓。目の前にはエルミタージュの丘がそびえ立っている。 エルミタージュでは2000年前からブドウが栽培され、そのワインはローマ時代からアンリ四世やルイ十四世にも愛されてきた。ローヌ左岸の小高い丘には、見渡す限りびっしりとブドウの樹が植えられている。花崗岩質の地面は非常に乾いており、カラっとした風が吹き抜ける。遮るものが何もなく、畑に照りつける太陽にブンブン飛び回る虫たち。地中海性気候のエルミタージュの畑は南仏を思わせ、目の前を雄大に流れるローヌ川と、対岸の景色がまばゆいばかりに美しい。カーブ・ド・タンはこのエルミタージュにも21ヘクタールの畑を持ち、AOC エルミタージュでは2番目に大きい生産者。 大手ネゴシアンとは異なり、生産者の協同組合として創られたカーヴ・ド・タンは、ローヌ北部の住民たちに4世代にわたって愛されてきた。10月の醸造所には各地から次々ブドウが運び込まれ、即刻作業が開始される。合計1000ヘクタールもの畑を所有するだけあって、醸造所にはこれでもかというほど多くのタンクが並んでいる。「これだけタンクがあっても全部使っているんです。北部は赤はシラーだけだから、熟す時期もほぼ同じ。約3日で収穫を終えて、それを全部すぐに扱わないといけないからこれだけの設備がいるんです。」と代表のグザビエ・ゴマール氏。全体の85%はシラーだが、マルサンヌを使った白ワインにも力を入れている。 …

ビストロのオ一ナ一の中には、時には本物のワイン鑑定人がいるものだ。 2003年の最優秀ビストロ賞を獲得者した、オ・プチ・シャヴィニョルのオ一ナ一のベルナ一ル・ロック・ブ一ジェ氏もその一人。彼の店は、17区でも特に優れたワインビストロ。 ベルナ一ル・ロック・ブ一ジェ氏は、フランス各地の見事なワインを、我々に紹介してくれる。彼は、アルザス地方の遅摘みワインとか、フォ一ジェルの規格外のものといった具合に、ワインにうるさいファンの要求にもこと細かく対応してくれる。もし、少しお金に余裕があれば、是非彼にワインの選択を任せることをお勧めしたい。 ロック・ブ一ジェ氏は我々に日常茶飯の悩み事を忘れさせてしまうような、ミッシェル・マラ一本人のサイン入り1999年のコット・ド・ニュイ・ヴィラ一ジュを出してくれるだろう。彼はまた魅惑的なアルザス地方のピノ・ノワールを持っている。 ロック・ブ一ジェ氏は、我々を迷わすことなく、ワインについて話す術を心得ている。彼のもと来るおおぜいのワイン生産者との会話の中に、彼の奥深いワインの知識を感じることが出来る。…