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2015年に2回も発生したテロ以来、日本人の間では「パリ=危険」というイメージが確立されてしまったようだ。1月のテロを少し忘れた頃に11月、今年3月にはベルギーでもテロが起こった。「だから行かない方がいい」というわけでツアーはキャンセル、飛行機にも空席が目立ち、数字にもはっきりその兆候が表れている。2015年にパリを訪れた世界中の観光客のうち、ダントツに減ったのは日本人で、前年比20%減。ホテルに滞在するアジアからの観光客も今年6月はマイナス25%を記録し、特に高級ホテルの滞在客が減っている。 そんな状況をフランス側も放っておけず、様々な対策に乗り出した。フランスの観光キャンペーンは強化され、パリ市長まで東京に出向き、パリの魅力をアピールした。何故そこまでやっきになるかといえば、日本人は1人あたり1日約200ユーロを使ってくれる、国際的に最高ランクのお得意様だから。そんな顧客が20%も減るのはかなりの打撃で、あの手この手でフランスの魅力や安全性を伝えようとする。 けれども「安心してください・・・」と言葉を重ねられる程「本当に大丈夫なんだろうか?」と勘ぐってしまうのが人間ではないだろうか。これまでのフランスはもっと気高い存在だった。「来たければ来たら?でも挨拶はフランス語でね!」美しい猫のようにそっけないフランスに、それでも一度は行ってみようと年間約80万人もの日本人が訪れていたが、実際にはパリ市長が力説するように「日本人はフランスに愛されている」と実感して帰国した人は稀だろう。 フランスは確かに魅力豊かで、私たちが思い込んでいるほど危険と隣り合わせなわけではない。テロは2度起きてしまった。だが3回目がもしあったとしても、自分がそこにたまたま居合わせ、負傷する確率はかなり低いだろう。パリは東京のような大都会で、テロが起きた競技場付近では毎日大渋滞が繰りかえされるほど、多くの人が行き来するが、11月以降特に目立った問題もない。3度目を起こさないためのフランスの警察や軍の努力も相当なもので、11月のテロ以降に渡仏した人は警備体制の変化に驚くことだろう。パリのスーパーやチェーン店ではガードマンによる見張りが非常に厳しくなり、1日に何度もカバンの中身を見せる必要がある。メトロでの乗車券チェックも頻度を増した。美術館のチェックは元々日本とは比べものにならないほど厳しかったが、今では空港のような検査をパスするために行列ができている。 そんな中、「テロが起こるといったって、いつ、どこで起こるかわからない。だから普通に生活するしかなく、怯えていても仕方ない。それに怯えていたらテロリストの思うがままだ」と主張し、あえて普通の日常を送ろうとするパリジャンも多い。テレビで恐ろしい映像を繰り返し見せつけられ、「パリ=テロ!」と思ってしまった私たちには、そんな日常が流れていることが想像し難いかもしれないが、実際には勇気を振り絞って渡仏したことが馬鹿馬鹿しく思える程に、リラックスした普通のパリが存在する。…