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エッフェル塔からもわりと近いカフェ・デュ・コメルスの看板を見つけるには、上を向いて歩く必要がある。入口はあまり大きくないものの、ドアを開けて廊下を進むと、光に満ちた空間があるのに驚かされる。カフェ・デュ・コメルスは中庭と2つの階の回廊からなる迫力あるブラッスリーだ。この店は100年前から存在し、内装は1920年代〜30年代のスタイルを保っている。 100年を超える歴史があるものの、この場所は今でも活気に満ちている。客席に聞こえてくるのはレストラン全体の活気である。いくつもの前菜をお盆に載せて運ぶギャルソン。装飾された店内の柱やワインレッド色のベルベッドの長椅子。パリのビストロらしいトーネットの曲木椅子。真鍮製の大きなシャンデリアに古いポスター、心地よい時を楽しむ客たちの声。 この店に足を踏み入れるとすぐに、ここはいい店だとわかるだろう。カフェ・デュ・コメルスではかつてのブラッスリーのようにギャルソンたちが重要な役割を果たしている。彼らは大きなお盆を持って忙しく動き回っているものの、お客を笑顔にする一言を忘れない。 カフェ・デュ・コメルスではパリのブラッスリーならではの伝統的な料理が楽しめる。 前菜には「ゆで卵のマヨネーズソース」「オニオン・グラタン・スープ」や名物の「ブルゴーニュ産天然エスカルゴ」。メインには、「南西地方の鴨のコンフィ、パセリポテト添え」「タルタルステーキ、自家製ポテトフライ添え」などがおすすめだ。お魚好きの人には、「フィッシュ&チップス、タルタルソース添え」「スズキのグリル…

近年パリでは「ブイヨン」が再び注目されている。「ブイヨン」というのは19世紀末にパリに誕生した、庶民的で低価格なブラッスリー。オペラ座付近、グラン・ブルバールの老舗「シャルティエ」は、パリに現存する唯一のブイヨンとしてその姿を伝えてきた店だ。そして2019年2月、モンパルナス駅目の前に待望の2店目がオープンした。 こちらは「モンパルナス1900」というビストロを改装しており、新規オープンというよりは、時を経てシャルティエに戻ったという方が正しいだろう。シャルティエ兄弟は1900年代にパリにいくつもの店をもっており、この店はもともとシャルティエだったのだ。そして116年の時を経て、同じグループに戻ってきた。 このブラッスリーは驚くほど当時の趣をしっかりと残している。店に入るとすぐ、ベル・エポックやアール・ヌーヴォーの時代に舞い降りたような気になれる。アール・ヌーヴォー調の彫刻が施された鏡、小さなチューリップ型のランプ、美しい女性像の彫刻に、ファイアンス陶器で飾られた壁面、そして天井には一面のステンドグラス。この店は1984年に歴史的建造物として指定され、ビストロとして営業を続けながらも当時の趣を保ってきた。モディリアーニもこの店の椅子でアルコールを飲んでいたかと思うと感慨深い。 フォブール・モンマルトルの有名なブイヨン・シャルティエを愛する人にとってありがたいのが、モンパルナスの店でもシャルティエならではの雰囲気が堪能できるということだ。ここでも黒の制服に白いエプロン姿のギャルソン達が店の評判を上げている。注文や会計は紙製のテーブルクロスの端になぐり書きという独特のスタイルも変わらない。 新しいシャルティエのコストパフォーマンスの高さにはパリの美食通たちも驚いている。この店の値段は表記の見間違いかと思うほどで、冬には野菜のポタージュが1€。フランクフルトとポテトの盛り合わせが6.5€、絶品の鴨のコンフィは10.6€、仔牛のマレンゴ風煮込みは11.2€。シャルティエ名物、アルコールのしっかり効いたデザート、ババ・オ・ラムは4.6€。ワインもとてもリーズナブルで、ボトル1本10€〜。量はそんなにという方には、ブッシュ・デュ・ローヌIGPのカラフ入りがあり、4.9€で分け合える。…