Browsing: パリのレストラン

近年パリでは「ブイヨン」が再び注目されている。「ブイヨン」というのは19世紀末にパリに誕生した、庶民的で低価格なブラッスリー。オペラ座付近、グラン・ブルバールの老舗「シャルティエ」は、パリに現存する唯一のブイヨンとしてその姿を伝えてきた店だ。そして2019年2月、モンパルナス駅目の前に待望の2店目がオープンした。 こちらは「モンパルナス1900」というビストロを改装しており、新規オープンというよりは、時を経てシャルティエに戻ったという方が正しいだろう。シャルティエ兄弟は1900年代にパリにいくつもの店をもっており、この店はもともとシャルティエだったのだ。そして116年の時を経て、同じグループに戻ってきた。 このブラッスリーは驚くほど当時の趣をしっかりと残している。店に入るとすぐ、ベル・エポックやアール・ヌーヴォーの時代に舞い降りたような気になれる。アール・ヌーヴォー調の彫刻が施された鏡、小さなチューリップ型のランプ、美しい女性像の彫刻に、ファイアンス陶器で飾られた壁面、そして天井には一面のステンドグラス。この店は1984年に歴史的建造物として指定され、ビストロとして営業を続けながらも当時の趣を保ってきた。モディリアーニもこの店の椅子でアルコールを飲んでいたかと思うと感慨深い。 フォブール・モンマルトルの有名なブイヨン・シャルティエを愛する人にとってありがたいのが、モンパルナスの店でもシャルティエならではの雰囲気が堪能できるということだ。ここでも黒の制服に白いエプロン姿のギャルソン達が店の評判を上げている。注文や会計は紙製のテーブルクロスの端になぐり書きという独特のスタイルも変わらない。 新しいシャルティエのコストパフォーマンスの高さにはパリの美食通たちも驚いている。この店の値段は表記の見間違いかと思うほどで、冬には野菜のポタージュが1€。フランクフルトとポテトの盛り合わせが6.5€、絶品の鴨のコンフィは10.6€、仔牛のマレンゴ風煮込みは11.2€。シャルティエ名物、アルコールのしっかり効いたデザート、ババ・オ・ラムは4.6€。ワインもとてもリーズナブルで、ボトル1本10€〜。量はそんなにという方には、ブッシュ・デュ・ローヌIGPのカラフ入りがあり、4.9€で分け合える。…