Browsing: アルザス

ファッフェンファイムに到着し、数多くのワインを試飲した後、強く疑問に思ったことがある。どうしたらこんなにも洗練されたワインばかりを造ることができるのだろう? どれもこれも、まさに美しいという言葉がピッタリと当てはまる。アルザスのワインとはこんなにもエレガントで繊細なものだったのか?日本でこのうちの1つにでも出会っていたなら、アルザスワインに対する印象が大きく変わっていただろう。 ファッフェンファイムはアルザス地方、ファッフェンファイムという地域のコーペラティブだ。コーペラティブというと質はどうかと思いがちだが、こちらのワインはどれをとっても驚く程に美しい。アルザス地方では基本的に白ブドウの単一品種でワインを造る。リースリングという品種で造った「Riesling Traditionトラディッション2012」の青リンゴ、白い花、りんごの蜜のような香り、ゲヴェルツトラミネールで造った「Gewurztraminer Cuvée…

アルザス地方のリボヴィレは、ストラスブールとコルマールの間に位置する、アルザスワインの中心地として栄えた街だ。色とりどりの花が迎える、おとぎ話のような街に到着するとすぐ、カーヴ・ド・リボヴィレの看板が目に飛び込んでくる。 街のすぐ横の醸造所からは開栓したてのシャンパーニュのような香りが漂っている。ブドウ収穫真っ最中のこの時期はトラックで次々とブドウが運び込まれ、すぐにプレスにかけられる。 カーヴ・ド・リボヴィレは、アルザス地方で最も歴史ある1895年創業のコーペラティブ。コーペラティブというのはブドウ農家が共同出資して醸造設備を購入し、各農家が収穫したブドウをまとめて醸造を行うシステム。コーペラティブはフランス全土に存在し、シャンパーニュでもメジャーなスタイルだが、消費者はコーペラティブと聞くと低く見積もりがちになる。だがカーブ・ド・リボヴィレのワインはそんな先入観を見事に覆してくれる。「うちのワインのコストパフォーマンスの高さは保証しますよ」と社長のイヴさん。2011年にアルザスの最優秀コーペラティブとして選ばれただけあり、カーブ・ド・リボヴィレのワインは味わい深く、ワインが語りかけてくる。 これからピノ・グリを収穫するというグラン・クリュ、グルットルベルグのオルリーさんの畑に向かう。ブドウ畑のある小高い丘の上からは、数々のブドウ畑と教会が見え、まさにアルザスという感じ。目の前にはピノ・グリが熟しているが、収穫は明日まで待つという。イヴさんは「カーブ・ド・リボヴィレのブドウの収穫はこのあたりで一番最後。酸と糖分が素晴らしいバランスになるギリギリのところまで待って収穫するんです」と語る。素晴らしいワインを造るには最高の状態のブドウを収穫することが欠かせない。生産者の頭を悩ませるのは、いつ、どのタイミングで収穫するか。もし待った日に雨が降ったら?オルリーさんはタイミングをどう計るのか教えてくれる。「こうやって畑のブドウを前後左右、適当にいくつか摘んで、容器に入れて潰します。それから器具に液を入れて濃度を計ります。どう、数値が見えるでしょう?アルコール度数が11,5℃以上になったら収穫可能なんですよ。」小雨の降る中、明日収穫する人がやりやすいように、とオルリーさんはブドウの房にかかる葉を黙々とカットし続ける。…

アルザス地方はフランス北東部、ドイツと国境を接する地方で現在でもドイツの影響が色濃く残る。おとぎ話に出てくるような色とりどりの可愛い街並、ヴォージュ山麓の溢れる緑、美味しい食事にワイン、それにビール産地としても有名だ。 魅力に事欠かないこの地方はパリに次いで2番目に多くの観光客が訪れる。これからの季節、クリスマス・マーケットといえばアルザスなので、12月に渡仏するなら是非足を伸ばしてみてほしい。アルザスには日本人も多く訪れ、今では年間4万5千人が滞在するという。 アルザスと日本との関わりは意外と深く、1863年にまでさかのぼる。鎖国後、大阪の商人達がアルザスの都市、ミュールーズで生産される羊毛生地に和柄を染色してもらうよう依頼しに行ったのが始まりだ。今年は交流150周年を記念して、アルザスと日本で様々なイベントが開催された。11月中旬にはヒルトン東京ベイにて「ボナペティ・アルザス・グルメナイト」が開催され、アルザス出身の総料理長と、来日したシェフ達が本場のアルザス料理をふるまった。また、今年はアルザスワイン街道と飛騨地酒ツーリズム協会との友好提携宣言や、コルマール市と高山市との経済・観光協力協定書などの経済協定も調印された。11月18日には東京で「アルザスと日本 深まるパートナーシップ」という記者発表会が開催され、アルザス人国際連盟の東京支部も設立された。今後アルザスと日本の結びつきはより一層深まることだろう。 アルザスはミシュランの星を獲得したシェフがパリに次いで2番目に多い地方でもあるという。アルザス料理というとボリューム満点の肉料理というイメージだが、実際には美しく繊細な料理を提供する店が多くあり、洗練されたもてなしのホテル業も盛んだそう。名物としては有名なシュークルートだけでなく、タマネギとベーコン、フロマージュブランをのせたピザのようなタルト・フランベ、豚のリエット、シャルクトリ、それにフォアグラ、クグロフなどが挙げられる。記者発表会ではアルザス名物と共にアルザスの白ワインも用意されていた。「シュークルートはワインと共に味わってこそ。リースリングやピノ・ブランを合わせるといいわ」とアルザス地方圏議会副議長のマリー=レーヌさん。確かにピノ・ブランの爽やかな酸味がシュークルートの味わいをキリッとひきしめてくれ、どちらの味もより引き立ってくる。ピノ・ブランはアルザスでは主要な品種で、リースリングより穏やかな味わいなので和食にも合わせやすい。香ばしく、ワインのみでも楽しめるピノ・グリや、珍しい5品種混醸のワイン、ローゼンエーゲルトも香り、味ともに複雑で非常に味わい深い。寒い季節こそシュークルートの美味しい季節。凍えそうになっていても、食べたら身体がぽかぽかになるこのメニューを見かけたら、アルザスワインとのマリアージュに是非挑戦してみてほしい。パリのブラッセリーでもアルザス料理が堪能できる。