ボジョレー地区の赤ワインに使用するブドウ品種は、ガメイのみと決まっています。フランスでは中世以降、ブルゴーニュ地方の人々がガメイに対して、実がつきすぎる、青臭い、味が弱々しいといった悪評を植え付けようとしてきました。けれどもブドウの樹の良し悪しは人間同様、人種や肌の色で決まるものではありません。よくしつけられ、きちんと手入れされ、素晴らしいテロワールで育ったガメイからは偉大なワインができるのです。年代物のボジョレーのブラインド・テイスティングは、非常に著名なワイン専門家にいたっても、ブルゴーニュのグラン・クリュかと思わせてしまうほど。
ボジョレー・ヌーヴォー
日本では経済危機や東日本大震災があったとはいえ、ボジョレー・ヌーヴォー消費の勢いはとどまるところを知りません。日本は世界の中でもボジョレー・ヌーヴォー輸出先のダントツ1位。ボジョレーにとって日本は非常に重要な市場です。とはいえフランス人からは不可思議に思えることも。どうして日本ではボジョレー・ヌーヴォーがこんなにも有名なのに、ジュリアナスやムーラン・ナ・ヴァンなど、ボジョレー地区のクリュについてはほとんど知られてないのでしょう?ボジョレーのクリュは味わいの繊細さやエレガントさではブルゴーニュの偉大なワインにもひけをとらないにも関わらず、お手頃価格で手に入る本当に優れたワインなんです。
ボジョレー・ヌーヴォーの特徴的な醸造法
ボジョレー・ヌーヴォーはフランスで唯一、マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)を使用するワイン。他の地方のワイン生産者はブドウの房の茎を取り除こうとするのに対し、ボジョレー・ヌーヴォーの場合はブドウを房ごとタンクに入れてタンクを閉めてしまいます。マセラシオン(色素や渋みなどの成分を抽出するために、ブドウの皮や種ごとブドウの果汁に漬け込むこと)の最中に、タンク内にはブドウから出て来た炭酸ガスで一杯になり、これがボジョレーに特徴的なベリー類の香りの出現を促します。マセラシオンをしているタンクを30度程度に温めて、4日から10日続くアルコール発酵を促す場合こともよくあります。また、今年のように収穫が遅れた年は、多くの生産者が酵母を加えて醗酵を促します。醗酵したワインの果汁を圧搾した後はマロラクティック醗酵をすることで、ワインの酸味を調整します。この場合にも、プロセスを促進させるためにバクテリアを使用することがあります。