ボジョレーという名を聞くと、もう今年は飲んだから、と思ってしまうかもしれない。世界最大のボジョレー・ヌーヴォー輸入国の日本では、ボジョレーといえば新酒と思われがちだ。ところがボジョレー地方にはより上質なワインを造る10のクリュが存在し、そこではブルゴーニュに負けない程上質なワインが生産されている。
ボジョレーのクリュ、サン・タムールで造られたピエール・フェローの赤ワインはバラのような香りで、夢見心地になるほどエレガント。優しいけれども芯の強い女性を思わせる、深みのある味わいだ。ピエール・フェローはボジョレー地区とマコン地区に拠点を置く5世代続く家族経営の生産者。来日した生産者のイヴ・ドミニクさんにお話を伺った。
「ボジョレーには2つの異なるタイプのワインがあります。1つはボジョレー・ヌーヴォーですよね。こちらはお祭り気分で、気軽に楽しめるワイン。それからボジョレーのクリュがあり、こちらはより深みがあり、テロワールごとの味わいが異なるワイン。クリュはどうしても新酒の裏に隠れてしまいがちなので、もっと伝えていかなければと思っています。うちはボジョレーの多くのクリュに畑をもっていますが、サン・タムールならサン・タムール、ムーラン・ナ・ヴァンならムーラン・ナ・ヴァンでと、その土地ごとに醸造所がありプレスから醸造まで行います。ボジョレーのクリュはテロワールごとに特徴があり、その良さを最大限引き出せるように努力しているんです。」 » ムーラン・ナ・ヴァン Moulin-à-vent 2010″はフレッシュなイチゴのような香りで、可憐な少女を思わせる品の良さがあり、軽やかでフルーティな赤ワイン。異なる味わいを愉しむために、10のクリュのワインを木箱に詰めたセット販売もしている。
フランスでも、ボジョレーのクリュの存在は追いやられがちだったものの、数年前からレストランやブラッスリーなどで実力が再評価されてきたという。「ブルゴーニュやボルドーはどうしても高くなりますからね。それでボジョレーのクリュを頼んだ人が実際に味わってみて、ガメイという品種の奥深さに気づくんです。」ピエール・フェローではボジョレー・ヌーヴォーとクリュの顧客がほぼ重なるため、ヌーヴォーを造る時も手を抜かず、量より質を大切にして造る。約30年前から日本への輸出を始め、日本はトップの輸出先。その高い質が評価され、昨年のボジョレー・ヌーヴォーはJALのファーストクラスとビジネスクラスで提供された。
収穫はヌーヴォーもクリュも全て手摘み。クリュの熟成用には昔ながらの巨大なオーク樽も4割程度使われる。「もう100年程経っている木樽ですから、強い樽香がワインに移ることはありません。その代わり、フルーティな味わいを強めてくれるんです。」
ピエール・フェローは、パリのレストランでも評判で、1番の顧客は政治家達に昔から愛されているサン=ジェルマン・デ・プレの名店、ブラッスリー・リップ。「リップには1986年からうちのワインを置いてもらっていて、ボトルだけでなく、キャラフやグラスでも注文できます。半年ごとに、私がおすすめのクリュをセレクトさせてもらって、それがキャラフで飲めるんですよ。」またリップ同様ヘミングウェイが愛したモンパルナスのカフェ、クローズリー・デ・リラでも味わえる。飲む者をうっとりした気持にさせてくれる、香りと味わい豊かなガメイのワイン。ボルドーより軽やかな赤が欲しいと思った日には是非試してみて欲しい。ピエール・フェローのワインはJALUXWINEのオンラインストアにて購入可能。
ピエール・フェロー P.Ferraud & Fils
http://www.ferraud.com