2013年11月末、赤坂のインターコンチネンタルホテルにて、「ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー試飲会」が開催された。
ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドーは、1973年にボルドー地方の名門シャトーが、ともに力を合わせてフランスはじめ、世界中で自分たちのワインを広めるためにつくった団体。現在では格付けシャトーを中心とする134のシャトーが加盟している。東京会場には108のシャトーの生産者や代表者が来日し、2010年のワインを振る舞っていた。ホテルの巨大な宴会場は見渡す限りグラスを手にした人の山で、一歩歩けば誰かにぶつかりそうな程。4時間のイベントには約900人ものワイン関係者が訪れた。
選りすぐりのワインだらけの会場内でも、特にハッとさせられたワインにいくつか出会った。1つ目はボルドー地方、シャトー・マルゴーで有名なマルゴー地区の、「Château Lascombes シャトー・ラスコンブ」。こちらは1855年に2級に格付けされたシャトー。 シャトー・ラスコンブ、2010年の赤は、ボルドーの上質なワイン特有の香りがふわりとグラスからたちのぼる。口に含むとタンニンはしっかりしているのに女性的な柔からさがあり、非常にエレガントで、口一杯に香りが広がる。こちらの品種はメルロー50%、カベルネ・ソーヴィニヨン45%。シャトー・ラスコンブは118ヘクタールものブドウ畑をもつ、メドック地区で最大のシャトー。
人なつっこいシャトー・ラスコンブの経営者、ドミニクさんと隣のブースで仲良く話す3級シャトー、 「Château Malescot St.Exupery シャトー・マレスコ・サンテグジュペリ」のジャン・リュックさんに勧められ、こちらの赤を試飲。この赤ワインも驚く程の味わいだ。口当たりは非常に柔らかく、複雑な味わいが口一杯に広がっていく。豊かな味わいの変化がなんとも心地よく、それをかみしめるためについもう一口飲みたくなってしまう。「このワインはバランスが非常に素晴らしいんです。アルコール度数は14%とけっこう高めなんですが、バランスのとれた口当たりだからその強さに気づかず飲めるんです」とジャン・リュックさん。こちらはカベルネ・ソーヴィニヨン50%、メルロー35%、カベルネ・フラン10%、プティ・ヴェルドが5%。全て新樽で12~14ヶ月熟成するそうだ。
会場内の7割程が赤ワインという中で、沢山の人が群がる白ワインのブースもあった。とはいえこちらは辛口白ではなくて、ソーテルヌの貴腐ワイン。ソーテルヌのグラン・クリュをいくつも味わえるという光栄な場所で、特に印象的だったのは「Château Guiraud シャトー・ギロー」。こちらはボルドー1級シャトーの中で唯一ビオワインを生産しているシャトー。有機栽培の貴腐ワインはまるで有機野菜のように味わいが力強く、口に含んだ瞬間に、これは違う、と訴えかけるものがある。口に含むと甘い香りがブワーっと口一杯に広がっていく。ハチミツのような甘さに、バランスのよいミネラル感。おもわず目を丸くしてしまう美味しさがある。そう感じたのは一人だけではないようで、シャトー・ギローのブースの前にはいつも人だかりができており、ソーテルヌのワインの中で一番始めに売り切れた。シャトー・ギローはソーテルヌで一番古くからワインを生産しているシャトーの1つで、正式にビオの認証を受けたのは2011年。「ボルドーでビオは大変かって?沢山収穫しようとするとそりゃ大変だけど、貴腐ワインはそういうワインじゃないからね。仕事量は多くなるけど、そこまで大変なものじゃないよ」と共同オーナーのグザビエさん。日本では高島屋などで購入可能。
最後のおすすめはバルサックの貴腐ワイン「Château Coutet シャトー・クテ」。シャトー・クテは1855年に1級として格付けされたシャトー。ブースで試飲を勧める若い女性のアリーヌさんはシャトーの所有者の一人で、家族2世代の5人で経営しているという。シャトー・クテの貴腐ワインはさわやかでさらりとした質感が特徴的。「クテ」というのはガスコーニュ地方の方言で「ナイフ」という意味で、フレッシュで切れ味のよさが特徴的な貴腐ワイン。ミネラル、しょうがのような後味があり、べったりとした甘さの全くないスッキリとした貴腐ワイン。こちらの畑は約40ヘクタールで、以前ご紹介したバルサックのシャトー・ピエダの真向かいだそう。貴腐ワインが好きな方には、素晴らしいワインを生産しているバルサック訪問もぜひおすすめしたい。