1930年代からパリの名物となっていた、カフェのギャルソン達のすばやさと
バランス感覚を競い合うギャルソンレースは、2000年を最後に10年ほど
中止されていたそうです。かつてのギャルソンレースは、パリや近郊の
カフェで働くギャルソンたちが、白と黒の制服を着て、約8キロの道のりを
トレー片手に颯爽と走るというものでした。トレーの上には飲み物のビンが
1つと空のグラスが3つ乗せられ、それらを片手に、パリの街を駆け抜けていく
姿は本当に美しかったそうです。
先日お話を聞かせていただいた、2000年にギャルソンレースで1位になった
マーク・ファーブルさんによれば、彼は8キロのコースをたった30分で駆けて
いったそうです。そう、ギャルソンレースただのお祭り騒ぎではなく、れっきとした
スポーツでもあったのです。このレースのおかげで、それまで酒好きであまり
やる気がないと思われていたカフェのギャルソンのイメージは、真面目で
プロ意識のある仕事人と思われるようになったのだそうです。
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さて、そんなギャルソンレースが、2011年の5月15日、飲料会社オランジーナの
主催で再開することになりました。出発地点はマレ地区のヴォージュ広場で、
コースは約3キロとかなり縮小されました。今回は10年ぶりの再開となったものの、
参加者にはギャルソンの制服着用も義務づけられておらず、中にはランニング姿の人や
仮装姿の人たち、またプロのギャルソンでない人たちも混じっていました。
オランジーナはコースのまわりにたくさんの目印を用意はしていたものの、
はじまりの合図のあとはあまりに狭い道に沢山の人たちがうごめいていて、残念なことに私は彼らを見失ってしまいました。なんとかゴール地点にたどり着いた頃には
参加者は全員到着していたようです。
それもそのはず、だって1位の人は11分以下で到着したのです!
さて、オランジーナのギャルソンレースはこれで終わりではありません。
オランジーナが力を入れたがっていたのはどちらかといえばこの後の方なのです。
3位までの人たちが表彰されたあと、ステージに並べられた各自30本の
オランジーナのボトルを3人のうち誰が一番早く開けられるかを競いあうことに
なっていました。そして、なんとも皮肉なことに、レースで3位だった
ジャン=ルイさんが1位、レースで1位をとったエティエンヌさんはここで
3位になったのです。何故かここでの順位はレースよりも大切らしく、
30本の瓶をあける競争で1位になったジャン=ルイさんに2000ユーロ、
2位のカミーユさんに1000ユーロ、3位のエティエンヌさんに500ユーロの
小切手が渡されました。
たしかにギャルソンであるからには瓶のフタを開けるのも早いにこしたことは
ないのでしょうが、ではこれがギャルソンレースなのかというと、開催前からも、
実際の開催後も疑問を感じた人たちもかなり多くいたようです。せっかくの
ギャルソンレース、私は15年前くらいから一度は見てみたいと思っていたのですが、
なんだかちょっと残念でした。ちなみにこのレースはこの一週間後にマルセイユで
もう少し規模を大きくして開催されるとのことです。