2013年10月初旬、シャトー・ラトゥール・マルチヤックに到着すると、まさにブドウ収穫の真っ最中。早速オーナーのトリスタン・クレスマンさんに様子を見せてもらうと、ブドウの選果場は巨大な機械が占領している。
「この機械はすごいんですよ。中にカメラが入っていてね、ここを通るブドウの粒を全部チェックしてるんです。基準に満たないものは自動で選別してくれる。これだと手作業に比べて2倍も早くできるんです。」これはフランスでもまだ珍しい、最新式の非常に高価で巨大な機械。今年はレンタルにしたそうだが、性能には非常に満足しているという。「うちのブドウは手摘みですが、人間の目で選果をしてても見落としがあるものです。シャトー・ラトゥール・マルチヤックが目指しているのは可能な限り最高なワインをつくること。素晴らしいワインをつくるために、うちだけ努力を惜しんでいたら競争になんて勝てないですよ。」
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いつだって何か改良できる点はないかを探しているというトリスタンさん。このシャトーは有名なネゴシアンだった彼の祖父が1930年に購入。1953年からシャトー・ラトゥール・マルチヤックはボルドー地方、グラーブ地区のグラン・クリュとして格付けされている。彼の父親は大きすぎたグラーブ地区に、新たにペサック・レオニャンというアペラシオンを創設するのに貢献したという。代々ワインに情熱のあるクレスマン家。トリスタンさんも同様で、ワインについての話は尽きることがない。
フレンチ・オークの樽が並ぶ白ワインの熟成庫には、1つだけ中身が見えるようにつくられた樽がある。「バトナージュいうのはね、こうやって樽の中に沈んだおりを混ぜること。底に沈んでいる細かい白いものがワインのおりです。これをちゃんと混ぜてアロマが立つようにするんです。」と実演してくれる。クリスマスまで週1回、全ての樽のバトナージュを続けるそうだ。フレンチ・オークの新樽を使用するのは全体の3分の1。樽も様々な樽屋のものを使い、微妙に異なる味わいを大切にして、最後にアッサンブラージュをする。