ここ数年、ボルドー市が注目されてきているのをご存知だろうか?パリに次ぎ、フランス人の最愛の街2位に選ばれたボルドーは、2015年、ヨーロッパの数多くの都市の中からベスト・デスティネーション・シティに選ばれた。ボルドー、あの灰色の街?それは昔のイメージだ。
95年にアラン・ジュペ氏が市長に選ばれて以来、ボルドー市は比類ない努力を重ねてきた。百年以上の汚れで灰色がかった住宅群の外壁を洗って美しいクリーム色を甦えらせ、中心地での車の通行を規制し、3路線のトラムを建設。さびれた川沿いの工業地帯も今や家族連れの人気スポットに変身だ。「昔ボルドーを訪れたっていう人は皆驚きますよ。えっ、こんな街だったかしらって。でもボルドーは目新しい何かで人を呼び寄せた訳ではありません。今まであったものを綺麗な状態にして浮き立たせただけなんです」と公式ガイドのブリュノさん。18世紀の趣を残す歴史ある街並と、車を走らせれば海もすぐというボルドーは、パリの喧噪に疲れた若いパリジャンたちの格好の移住先となっている。
ボルドーが特に栄えたのは18世紀の海運貿易が盛んな時代。月の港と呼ばれたボルドーはフランス最大の港として世界にその名を馳せていた。だが19世紀、鉄道の時代になると次第に船の重要度は低下していき、ボルドーの黄金時代も終わりを告げる。時を経て21世紀。ボルドーは港町であることを改めて自覚し、ガロンヌ川沿いの整備に乗り出した。2006年にはトレードマークの証券取引所の向かい側に「水鏡」が誕生。これは広場に薄く水を張ったもので、日中は子供達が足をつけてピチャピチャ遊び、夜になるとライトアップ効果で正面の建物全体が鏡のように映し出されるというものだ。幻想的な風景に18世紀の威厳ある建造物。美しく磨かれた旧市街一帯は2007年にユネスコの世界遺産に登録された。水鏡や遊歩道、川に面したショッピングモールの誕生もあり、夜は怖くて近づけなかったという川沿いのイメージもすっかり変わり、家族連れやジョギングをする人で賑わいを見せる。ボルドーでは船を用いた観光業にも年々力を入れ、豪華客船を呼び込むとともに、船でワイン産地を訪れるツアーも多く企画されている。
もちろん荘厳な建物が造られたのはワイン貿易あってこそ。それに世界中の人がボルドーに憧れを抱くのも、ワインの名声があるからだ。ではボルドー市内でワインを堪能するにはどうしたらいいのだろう?数々のワインバーがある中で、是非とも足を運んで欲しいのはボルドーワイン委員会のワインバー、「Bar à Vin de CIVB」(バー・ア・ヴァン・ド・セイべべ)。こちらは利益目的ではなく、ボルドーワインの多様性を知ってもらう場としての機能が強いため、約30種類のボルドーワインがグラス2€~という低価格で楽しめる。クレマン・ド・ボルドーからメドックやサン・テミリオン、貴腐ワインまでズラリと揃い、提供されるワインリストは毎日変わる。スタッフの多くがソムリエなため、悩んだ時はアドバイスもしてくれる。沢山試したいけれどそんなに飲めない、という時は半量で半額にしてもらうことも可能。ワインはグラスワインのみの提供で、ボトルでの提供や販売はしていない。
同建物内には高名なボルドー・ワインスクールもあり、こちらでは初心者~上級者向のワイン講座も開催されている。ボルドーワインの歴史や地質の特性、ブドウ品種等を学んだ後はテイスティング技術をしっかり学べ、産地見学前にもってこい。(要予約)
[pro_ad_display_adzone id= »1569″]
さて、現地で気に入ったワインをお土産に、と思っても、試飲と購入ができる店は意外に多くない。グラン・テアトル付近の「マックス・ボルドー」はそれを兼ね備えた貴重なお店。夢のような格付けワインを消費者の身近なものに、という趣旨で作られたこの店に足を踏み入れると、名だたる格付けワインがズラリとディスペンサーに並んでいる。ディスペンサー内の全てのワインは、2€から試飲が可能。扱うワインはボルドー産のみ。格付けのものだけでなく、手頃な価格のワインや貴腐ワインも味わえる。ボトルはネゴシアン価格で販売してくれるため、格付けワインでも意外と高くないから驚きだ。醸造家や生産者による数々のワインセミナーも開催されており、事前に相談すれば垂直試飲等にも応じてくれる。
せっかくボルドーまで来たのだからワインのことをもっと知りたい!という方には「ワインとネゴシアン博物館」がある。こちらは元ワイン貯蔵庫を改造して作った博物館。ボルドーのネゴシアンやクルティエの歴史、ワインの技術革新についても実物の展示を通して学んでいける。また、2016年6月にはボルドーだけでなく世界中のワイン文明について最新技術を駆使して紹介する「ワイン博物館」(Cité du Vin)もオープンした。こちらでは五感を最大限に使った特別な試飲アトリエも開催される。詳しくはこちらの記事を参照してほしい。
もちろんワイン産地を訪れたい、けれど車の運転が・・・という方にも選択肢は豊富にある。一番のおすすめは市内発、半日または1日の日帰りツアーで、ガイドとともに小型バスに乗りメドックやサン・テミリオンなどの産地に行くものだ。半日だと1-2軒のシャトー見学と試飲が可能で、サン・テミリオンは市内見学可能なものも。特にサン・テミリオンは電車で行くには不向きなため、ボルドー市内発のツアーをおすすめしたい。限られた時間だから思い入れあるシャトーだけを巡りたい、というという方はボルドー観光局へ事前に相談すれば、オーダーメイドのツアーも可能。他にもブドウ収穫体験や、シャトーで生産者と一緒に昼食をとるツアー、自分好みのワインをアッサンブラージュする体験も。船でのワインツーリズムに力を入れているボルドーでは、クルーズしながらワインを飲めるだけでなく、その船でメドックやポイヤックなどの産地を訪れることもできる。ワインの女王と呼ばれるボルドーワインを育んできたこの街は、まさに女王としての気品と誇りに目覚め、この地のワインのように深みのある輝きを増している。フランス流の豊かな生き方を体現する街、ボルドーは期待を裏切らない。「いつかボルドーを訪れたい」そんな夢がついに現実になった頃、目の前には夢のようにキラキラする世界が待っている。
ボルドーまではパリからTGVで約3時間15分
(パリ・モンパルナス駅からボルドー・サン・ジャン駅)
ボルドー・サン・ジャン駅から市内まではトラムC線で約10分
グラン・テアトル付近が中心地となっており、産地へ向かうツアーの多くもそこから発着。Bar à Vin de CIVB ボルドーワイン委員会のワインバー
3 Cours du 30 Juillet, 33000
05 56 00 43 47
月曜~土曜 11時~22時まで営業(祝日休)Max Bordeaux マックス・ボルドー
14, Cours de l’Intendance 33000 Bordeaux
05 56 29 23 81Musée du vin & du négoce ワインとネゴシアン博物館
41 rue borle, 33300 BordeauxLa Cité du Vin ワイン博物館
150 Quai de Bacalan, 33300 BordeauxOffice de tourisme Bordeaux ボルドー観光局
12 cours du 30 Juillet