海に近いボルドーは湿気が多く、ブドウにカビがつきやすいため、ビオにするのは難しい。特にボルドー右岸で最も大西洋に近いコート・ド・ブライで、ビオよりもっと規定の厳しいビオディナミを実践するのは簡単なことではなく、現在は2軒のみ。
その1つがシャトー・ロラン・ラギャルドだ。美しいワインラベルに名を刻むブリュノ・マルタン氏は父親から29haのブドウ畑を引き継いだ。父の代も自分の代も、そして息子のマルク氏の代に至るまで畑では除草剤を一切使用しない。
畑に足を踏み入れると青々とした草が生い茂り、ほっとする空気が流れる。もともと土に負荷をかけない栽培法を模索していた彼らは2010年からはビオ認定を受け、2014年にはより規定の厳しいビオディナミの認証(Demeter デメター)を受ける。「ブドウの樹や土を尊重して、できるけ自然な状態でワイン造りをしたかったんです」と息子のマルクさん。畑に草があることで、ブドウの樹と植物が競い合ってブドウの実がより小さく、凝縮されたものになるという。規定よりもあえて収穫量を少なくし、上質なブドウのみでワインを造る。「もともと味は良かったですが、ビオディナミにすることで一層味わいがよくなりました。ミネラルや果実味をもっと感じるようになったんです。ビオディナミでも偉大なワインができると示したかったんです」とマルクさん。こちらは醸造の際の酸化防止剤も最低限しか使用せず、人工的な酵母は一切添加しない。他の産地に比べて湿気の多いボルドーでは、ブドウに害虫がつきやすいため、薬剤の散布は不可欠だが、それもビオディナミの規定に従い、天然素材のみを使用。
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29haのうち白ワインの生産は1ha半ほどだ。だがこちらの白はコクがあり、豊かな味わいを感じさせる。「上質な白ワインは樽で醗酵・熟成させています。こちらの樽に入っているのはは5日前に収穫したばかり。3日間マセラシオンして、それを搾って、樽に入れたところです。ピチピチと醗酵する小さな音が聴こえるでしょう?」とマルクさん。樽に耳を近づけると確かにブドウのささやき声がする。樽醗酵、熟成させることにより、トースト香や複雑さをもたらすという。2012年の白はリッチでこくがあり、後味はほんのりはちみつのような甘みがある。ソービニヨンブラン80%、ミュスカデル20%。
赤ワイン、 »Roland la garde 2012は »果実味豊でコクがあり、複雑で非常に味わい深い。こちらはメルロー30%、カベルネ・ソービニヨン10%、マルベック60%。ロラン・ラ・ギャルドの赤ワインは紀伊国屋青山店や東急本店などで購入可能。