フランス第2の規模を誇るAOCワイン産地、コート・デュ・ローヌはリヨンの南からアヴィニヨンまで、南北に約250㎞渡って広がっている。ローヌ川はリヨンの市街地を横切り、マルセイユの西で地中海に注ぐ広大な河川。この地でのワイン造りは、マルセイユがローマ帝国の植民地だった紀元前600年から始まり、北部でも1世紀にはワイン造りが始まった。
一方、南部のアヴィニヨン周辺には、AOC「コート・デュ・ローヌ」や「コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ」が広がっている。こちらは主にカフェやビストロで気軽に楽しむタイプの若くてフルーティなワイン。リーズナブルで味わいが良く、パリのビストロで昔から愛されている。近年では特にカフェ、レストラン業界でローヌの赤ワインの需要が高まり、AOC「ボルドー」に続いてAOC「コート・デュ・ローヌ」は2位の地位を占め、約70%の店のワインリストに掲載されるほど。
コート・デュ・ローヌでは、南に下っていくほど、シラーに加えて黒ブドウのグルナッシュやモルベードルが一緒に使われるようになる。「GSM」と呼ばれる、グルナッシュ、シラー、モルベードルの組み合わせはあまりに成功したため、オーストラリアでも再現されている。ローヌでは画一性を好まない生産者にも選択肢が多くあり、優しい味わいのサンソーやクノワーズはじめ、約20品種の使用がAOCで認められている。そのため、コート・デュ・ローヌは幅広いスタイルをもったワインとなり、愛好者に好まれている。また、ローヌの白は全生産量の7%とはいえ、繊細で複雑な味わいがあり、高級フランス料理に合わせるのに優れたワインとして重宝されている。
ローヌ地方はワインツーリズムにも力をいれている。特に南部のワイン産地はプロバンス地方にかけて広がり、ブドウ畑とオリーブ畑がラベンダー畑と共存する景色が圧巻だ。2017年春以降には、アヴィニヨン中心部に、ローヌワインの良さを知るための中核となる施設がオープンし、さまざまなローヌワインを気軽に味わえるようになる。太陽の恵みをたっぷり受け、味わいがはっきりしているものの、重すぎず、柔らかすぎることもないグルナッシュ主体のローヌワインは和牛とも非常に相性がいい。とはいえローヌ好きのアメリカに比べ、日本でのローヌワイン消費量は微々たるもので、輸出量は輸出全体の2%にとどまっている。「今はローヌ品種、シラー、グルナッシュ、モルベードルが人気の時代。だからこそ、がっかりさせるようなものを作るわけにはいきません。」とローヌワイン委員会代表のミッシェル・シャプティエ氏。2015年に続き、2016年の赤ワインも素晴らしい年になりそうだ。