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サン・トノラ島のワイン  Les vins de l’Ile de Lérins

サン・トノラのワインは日本でも昔から愛されている貴重なワイン。サン・トノラ島は、カンヌ映画祭で有名なカンヌの向かい側にある、コート・ダジュールに浮かぶ美しい島だ。ニースから近いとはいえ、テロリストがトラックで乗り付けてくることはまずないだろう。ここに来るには船に30分も揺られる必要があるのだから。

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到着したらあまりの静寂さに思わず息を呑むことだろう。ここには車もなければ道路すらない。この島にある音、それは地中海のざわめきや蝉の鳴き声だけだ。ハイ・シーズンには1日約800人が訪れ、夕暮れ時にはまた船で帰ってゆく。島で夜を過ごすのは退職後を修道院で過ごす人達だけなのだ。

40haのサン・トノラ島は、シトー会のレラン修道院が13世紀から所有する。修道士たちは8haのブドウ畑を開拓し、シラーやピノ・ノワール、シャルドネやクラレットを栽培。島にはオリーブオイル用にオリーブも植えられている。

ブドウ栽培とワインの醸造責任者はマリー氏だ。ブドウ畑の全区画を熟知しているマリー氏は、千年前からの修道院の歴史があってか、かつての修道僧を思わせる雰囲気の持ち主だ。「2016年のヴィンテージからは公式にビオとして認定されます。万が一どこかの農薬が島に流れ着いてたら別ですが。」ビオ認証によって今後はカナダなどへの輸出もしやすくなるだろう。

地球温暖化の影響はこの島にもはっきりと表れている。水分が不足し、雨もほとんど降らなくなった。だから修道士達はブドウの栽培法を変え、ブドウの実が直射日光に当たりすぎないように、葉っぱも残しておくことにした。とはいえまだ問題は残る。年を追うごとに収穫開始日が前倒しになっていくことだ。修道士達は聖母マリアの日である8月15日に収穫を行うわけにはいかない。だから2015年は8月17日に収穫を開始したものの、すでにアルコール度数は一度高くなっていた。水分不足によるストレスで、シャルドネの収穫量は30%も減少。これらのことが醸造過程にも変化を及ぼしている。いくつかのキュヴェは、ワインに丸みをもたせるために、新樽で24ヶ月熟成することにした。

日本をはじめ、長年数々の国へ輸出されてきたレラン修道会のワインの評判を決して落とすわけにはいかない。価格が多少上昇しても、ワインにかける手間と驚くべき品質で、この値段に納得してもらう他ないだろう。

サン・トノラのワインは赤、白ともにこくがあり、豊かな表情を示してくれる。ボディがしっかりしており、島特有の塩気や、ユーカリなど、地中海沿岸の樹々の香りが感じられる。深みのあるシラーを使用した、フルーティでスパイシーな、うっとりさせるワイン、サン・トノラ(33€)。酸味と塩気も感じられる、ふくよかなシャルドネのキュヴェ・サン・セザール。そして何より、ムヴェードルの信じがたい味わいを表現するのがキュヴェ・サン・ランベール(125€)。力強いと同時にヴィロードのようになめらかで、幸福の残り香のような素晴らしい余韻にいつまでも浸っていられるワインなのだ。

サン・トノラ島のワインはワインショップ、ヴィノス山崎で扱いがある。

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