映画「アメリ」の舞台として一躍有名になったパリの北、モンマルトル。平地続きのパリには珍しく、モンマルトル は険しい坂に満ちている。丘の上にそびえ立つサクレクール寺院の左手にある小道を通ると、有名なテルトル広場につきあたる。テルトル広場では今でも画家達 が絵を販売し、似顔絵描きがスケッチブック片手に観光客の顔を描いている。この賑やかな広場から少し進み、ぐっと落ち着く一画にモダンなビストロ「ボワッ ト・オ・レットル」がある。
モンマルトルの喧噪の目と鼻の先なのに、この店には落ち着いた雰囲気がある。この店を切り盛りするのはシェフのフレデリックさんとホール担当のアントナ ンさん。27歳という若さにて、この店は彼らの2店舗目のレストラン。フレデリックさんはもとは違う職種だったが、料理好きがこうじてシェフの世界に転 身。エッフェル塔のアラン・デュカスの店で修行し、アントナンさんと1店目の店、「バランソワール」をモンマルトルにオープンさせた。この店は瞬く間に人 気となり、次第にお店に入れない客が続出。「だったらお客さんを他の店に行かせるよりは、自分たちで2店目をやろうという気になったんです。」とフレデ リックさん。そして2013年、同じモンマルトルに「ボワット・オ・レットル」をオープンさせる。店名はフランス語で「郵便ポスト」という意味で、店内に は黄色い小さなポストが飾られている。
この店の特徴はワインと新鮮な食材にこだわっていることだ。ワインはアントナンさんがセレクトする。「扱っているワインは全てフランスワイン。基本的にボ トルは赤を12種類、白を8種類、ロゼを2種類用意しています。グラスワインは赤4種類、白4種類を常備しています。」地方も幅広く、ボルドー、ブルゴー ニュといった有名どころから、ボジョレー、アルザス、コート・ドゥ・ローヌ、ロワール、南西地方のワインから貴腐ワインに至るまで、ほぼフランス全土のワ インを楽しめる。ワインがこれだけ揃っているということもあり、お客さんは圧倒的に夜の方が多いそう。「カクテルも本日のカクテルだけでなく、大抵のもの は注文に応じてできますよ。」
フレデリックさんは新鮮な食材にこだわりがあり、パリの卸売市場、ランジスから毎朝食材を届けてもらう。料理は全て自家製で、冷凍庫は置いてないとい う。「僕は料理が好きで料理の道に入ったわけで、本当の料理をするのに喜びを感じるんですよ。冷凍の食材を使って温めるだけだったら、この仕事がつまらな いと思うだろうな。」旬の食材を何よりも大切にするボワット・オ・レットルは固定メニューではなく、月ごとにメニューを一新。その中でも定番として、「田 舎風テリーヌ Terrine de Campagne」、「牛ステーキのフォワグラソース Onglet de boeuf Sauce foie gras」「ブラウニーのティラミス Tiramisu aux brounies」などはだいたいメニューに存在している。フィッシュバーガーなど、自家製ハンバーガーも人気のメニュー。
レピック通りに開け放たれた店に 向かって、通りすがりの観光客が声をかける。アントナンさんはバイリンガル並みの英語でいつでも優しく道案内。これだけ英語のできる人がホールにいるなら 日本人も心強い。観光客相手の質と値段の店が並ぶモンマルトルで、良心的な価格ですばらしい料理を提供してくれる。パリジャンの中に交じって、モンマルト ルの心地よい時間を満喫するのに是非おすすめしたいビストロだ。
La Boîte aux Lettres ラ・ボワット・オ・レットル
住所:108, rue Lepic – 75018 Paris
電話: 01 42 51 76 84
メトロ : Abbesses
営業時間:12時〜夜2時 日月休