東京に飲食店は星の数ほどあれど、リーズナブルで本当に美味しいフレンチを見つけるのは至難の技だ。広尾の「ラ・トルチュ」はそんな類い稀な一軒で、スープを一口味わっただけで、この店は違う、というのが伝わってくる。とうもろこしの冷製スープの複雑で繊細な甘み、アクセントになる塩気の効いたベーコンとの抜群の相性の良さ。これは凄い・・・という驚きは有難いことにデザートまで続いてくれる。肉の焼き加減からクレームブリュレの表面のパリパリ感に至るまで、すべてが絶妙という他なく、フランスで美味しいものに出会った時の湧き上がるような喜びが、東京に居ながらにして味わえる。
「ラ・トルチュ」は見た目は小さな個人経営のレストランだが、実はパリでも高名な日本人シェフ、吉野建氏の店だと聞けばこの質の高さに納得がいく。吉野氏が監修するフレンチが東京に3軒ある中で、「ラ・トルチュ」は一番カジュアルなビストロで、ランチは2400円から、ディナーは4200円からと、値段もいたってリーズナブルだ。
前菜には牛タンのスモークとフォワグラのムースをミルフィーユ状に重ねた「牛タンとフォワグラのルクルス」も人気がある。こちらも少し口に含んだだけで、どれほど丁寧に作られているかが伝わってくる。とろりとした牛タンと、クリーミィでコクのあるフォワグラのムースの異なる個性が口の中で混ざり合い、絶妙なハーモニーを醸し出していく。
メインのおすすめはスコットランド産のサーモンをオーブンで数分だけ焼いた「サーモンのミキュイ」。脂がのってとろりとしたサーモンが非常に柔らかく、優しい味わいで、エシャロットやディルが入って少しピリッとしたクリームと見事に調和。他にもパテ・アン・クルートや、秋から冬にかけてはイノシシ、野鳥、鹿などのジビエも堪能できる(サーモン以外は基本的に夜のコース)。
「ラ・トルチュ」のテロワールを感じる味わい深い料理はまさにフランスワインにピッタリだ。ワインは赤、白ともにフランス産の様々な地方のワインを揃えており、グラスワインも600円から。せっかくフレンチに行くなら肩肘張らずに食の喜びを堪能したい、そんな方に是非おすすめしたい。
ラ・トルチュ La Tortue
東京都渋谷区広尾5−14-14
03-6459-3713 毎日営業
日比谷線 広尾駅徒歩2分
ランチ 11h30-15h30
ディナー 18h-23h30 (土日祝は17h30-23h)ランチのコースは2400円、3400円、5400円
ディナーのコースは4200円、5800円、7500円