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FOODEX JAPAN 2024で出会った美味しいものたち

今年もアジア最大の食の祭典、FOODEX JAPAN 2024が開催された。昨年から会場が東京ビッグサイトに変わり、参加者のアクセスも良くなり外国人の出展者もコロナ以前のように戻ってきて、以前の姿を取り戻した賑わいだった。

年々勢いと規模を拡大していくイタリアブースは、外国ブースの中でも突出しており、ブース内で迷子になってしまうほど。毎年恒例のイタリア国際カフェテイスティング協会日本支部によるエスプレッソブースでは、イタリア各地の8種のコーヒー豆から2つを選んで味わいを飲み比べ、飲む人たちが携帯を使ってテイスティングノートをつけていく。ここでは日本で一番美味しいエスプレッソが飲めると思っていたが、それもそのはず、豆が素晴らしいだけではなく、こちらのブースで働いているのは日本でも屈指のバリスタの集まりなのだという。初体験のヴェネト地方の「ネロ・ドーロ」は会場内でも評判で、南イタリアの豆ほどパンチが強くなく、バランスが絶妙で優雅な後味が素晴らしい。

素晴らしいエスプレッソは1日の活力を与えてくれ、広大な会場を廻る気力を与えてくれる。イタリアのブースはオリーブオイル、パスタ、ワイン、コーヒーなどの出展が多かったものの、イケメンのイタリア人男性がパネトーネをカットする姿につられ、フルラン・グルメの前では人だかりができていた。こちらの男性フルランさんはパティシエであり、三世代続くフルランではパネトーネの他にマカロンやプラリネ、ドラジェなどを作っている。日本でもパネトーネは流行りつつあるが、パサパサした食感のものが多い中、こちらのパネトーネは驚くほどしっとりしている。

一体何が巷のものと違うのか?と聞くと、天然酵母を3分の1、伝統的な酵母を3分の2でミックスさせることにより、酵母の働きで独特の軽やかさが生まれるのだそう。生地には大きな気泡があり、それが酵母がしっかりと働いた跡なのだ。独特のしっとり感は、パンでも洋菓子でも経験したことのないもので、この柔らかさとレモンクリームやピスタチオが絶妙にマッチする。パネトーネはイタリアではクリスマスのお菓子だが、外国の場合はいつ食べてもいいという。パネトーネ好きには間違いなくおすすめでコーヒーにもピッタリの味わいだ。

今回は例年よりコーヒーのブースが多い印象だが、すでに輸入業者を見つけたというナポリのカフェンの主人も来日。彼が人にコーヒーを淹れる所作は非常に丁寧で、砂糖を入れた後も丁寧に何度も何度もじっくりとかき混ぜてくれるのが印象的だ。カフェンのエスプレッソは非常にクレマがしっかりしており、濃い茶色で、灼熱のナポリを思わせるコクのあるしっかりとした、まさに南イタリアらしい味わいだ。

また、多くのオリーブオイルがある中で、特に印象に残ったのはフラントイオ・パラペッラのオイル。こちらは数多くの種類のオリーブオイルを生産しているが、少し変わっていて日本の食卓に合わせやすいのがローリオ・ワサビだ。このオイルはイタリアで育てたワサビのエキスを抽出して加えたもので、オイル自体の味わいの強い他のものに比べるとわりとあっさり、さらりとしているが、最後に喉の奥にピリリと感じ、あぁこれがワサビか、と納得がいく。オイル自体の味わいは濃くないため、鯛など白身魚のお刺身や、菜の花のパスタなど、ほんの少し辛味か苦味のアクセントを添えたいものにも向いている。

フランスパビリオンでは、ワインのブースが圧倒的多数を占めており、来場者にわかりやすくするため、各ブースからのおすすめワインを1つ選び、30本を展示するというコーナーが設けられていた。こちらで気に入ったものをまず探し、ここを起点にブースを巡れるようにするという趣旨だ。

圧倒的に多いのがワインとはいえ、実はその中でシャンパーニュのメゾンはたった一社のみ。とはいえこちらのメゾンは大当たり。ブドウ栽培から瓶詰めまで一貫して自社で行う、シャンパーニュ地方では少数派であるマニピュラン・レコルタンのシャンパーニュ・エリック・ルグランは、シャンパーニュで認められている品種を単一品種で造ったものを用意。すべて極辛口のエキストラ・ブリュットで、どれも泡が非常に細かくエレガント。ちなみにシャンパーニュ地方で造られるシャンパーニュでは、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエの3品種が有名だが、それ以外にも4つの品種がAOCで認められているという。ピノ・ノワール100%の2017年のシャンパーニュはとても香り高く、エレガントで飲みやすい。シャルドネ100%の「ビュル・ド・フォリー」は300リットルの樽で熟成したもので少し樽香がある。非常に爽やかで洗練された泡が本当に心地よく、気持ちをスッキリしてくれる。珍しいピノ・ブラン100%のシャンパーニュは、1区画でしか栽培されていないというレアな商品。こちらも非常に繊細で、スッキリした辛口で、お酒を飲んでいるのに頭が冴えてシャキッとするような独特の感覚がある。元気がなく食欲のない時に口にしたら、元気すら湧いてくるような、まさにこれぞ本物といえる素晴らしいシャンパーニュ。

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