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コース料理と楽しむキャンティ・クラシコ

6月4日、ペニンシュラ東京にて、キャンティ・クラシコの魅力を味わうプレス・ランチが開催された。キャンティ・クラシコはかなり有名なイタリアワインだが、日本に輸出されているのは実は全生産量の2%にすぎないという。今回は様々な料理とのマリアージュを通じて、多様性があり幅広いキャンティの魅力が体感できた。

キャンティ・クラシコはイタリアのトスカーナ地方、シエナとフィレンツェの間で14世紀から生産されている歴史的重みのあるワイン。イタリアワイン大使の宮嶋勲さんは、フィレンツェの生産者は貴族的で、土に触れたことがないような手をしている人もいると語っていたが、キャンティ・クラシコの魅力はまさにこの貴族的で優雅な雰囲気にあるだろう。イタリア都市研究の第一人者、法政大学名誉教授の陣内秀信先生によれば、昔から貴族のヴィラが点在していたこの地域では、ヴィラを中心にワインが生産され、独特の風景を保ってきたという。生物多様性を大切にしてきたキャンティは、フランスのワイン産地と異なり、産地全体の10%しかブドウ畑が占めていない。他は森林やオリーブ畑で、その間に産地が点在する姿がなんとも美しい。キャンティは陣内先生とともに産地として現在ユネスコの世界文化遺産登録を目指している。

プレス・ランチでは合計6種類のキャンティ・クラシコが提供された。「タスマニア産サーモンのコンフィ とうもろこしのヴルーテ」に合わせたのは、アンナータと呼ばれる一般的なランクのキャンティ・クラシコ2種類だ。サーモンは魚料理だがコクやとろみがあり、意外にも赤ワインのキャンティ・クラシコによく合っていた。「Chanti Classico Nardi Viticoltori 2022」はとてもエレガントで香り高く、さわやかな酸味の軽やかなワイン。「Chianti Classoco Terra di Lamole 2021」は鼻の奥までスッと届く華やかでエレガントな香りがあり、はかなげで繊細な味わい。どちらも軽やかで飲みやすく、魚や新鮮な野菜の味わいを上手に引き立ててくれる。

「桜海老をまとった鱸のポワレ トマトフォンデュ ホタルイカとインカポテトのジェノベーゼ」に合わせたのは「Chanti Classico Castello di Volpaia Reserva 2021」。こちらはとても華やかな香りでコクが強く、酸味とボディのバランスが素晴らしい。お肉にも合うしっかりした味わいだ。「Chianti Classoco Castell’in Villa Riserva 2019」はかなりコクがあって濃く、しっかりめの味わいだ。トマトのソースやホタルイカのコクや、土っぽい味わいによく合っている。

上記は2品とも魚料理で、繊細な和食に近いペニンシュラのイタリアンにもよく合っていた。とはいえ、キャンティ・クラシコが本領を発揮するのはやはり肉料理だろう。ワインの味わいもどんどん濃く、強くなっていくなか「オーストラリア産牛フィレ肉のグリル 南瓜と生姜のピューレ」に合わせた「Chanti Classico Il Crocino Gran Selezione 2021」と「Chianti Classico Sasello Gran Selezione 2018」はどちらも香り高く、かなり濃いめでコクがあり、お肉料理によく合っていた。

今回の食の体験を通じて、ひとくちにキャンティ・クラシコといっても全然味わいが違い、軽くてスズキのような白身魚に合うものからお肉に合うものまで、何にでも使える懐の広さがあると知った。ボルドーワインは濃すぎ、ピノ・ノワールだと味が薄めに感じる人には、キャンティの酸味とボディの絶妙なバランスがおすすめだ。主張しすぎず、弱すぎず、料理をしっかり引き立てて食卓の時間をより豊かで楽しいものにしてくれる。日本流の繊細なフレンチやイタリアンに実はキャンティ・クラシコはぴったりなのではないだろうか。

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