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イタリア産チーズの魅力とは?

6月12日、東京の目黒雅叙園で、イタリア産チーズ  テイスティング・マスタークラスが開催された。「牛乳、水牛乳製チーズ編」の講師を務めたのはチーズプロフェッショナル協会 会長の坂上あきさん。

イタリアには500種類以上ものチーズがあり、古来よりチーズは食卓に欠かせない存在だった。イタリアチーズは、ヨーロッパチーズの父と言われている。というのも、中東のメソポタミアでミルクの加工が始まり、それがギリシャからイタリア半島に伝わり、ローマ帝国の拡大とともにヨーロッパ全土に広まったから。

イタリアチーズの特徴として、北部はアルプス山脈や平野があるため、比較的涼しく、広い牧草地があることが挙げられる。牛が放牧しやすいため、北部では牛乳製のチーズが多い。標高が高く、寒い地域も多い北部では、もともとは冬の間に食べる食料を確保するという目的で、硬くて保存性の高い大きなチーズが造れられてきた。パルミジャーノ・レッジャーのやグラナ・パダーノなどは平野部で造られているが、これらは元々山岳地帯でチーズ造りをしてきた修道士たちが、平野部に降りて同じような製法で造ったものだという。

それに対して、中南部は、縦に長いアペニン山脈が通っているため、平地が少なく、暑くて乾燥しているのが特徴だ。牛は暑さに弱く、草も育ちにくいため、放牧には向いていない。そのため、羊や山羊のチーズがメインとなっている。水牛はもともとはイタリアに存在しなかったものの、11世紀頃、十字軍の遠征により、アジアで農耕に力を発揮していた水牛を持ち帰ったことから広まっていった。水牛は暑い場所を好むため、ナポリのあるかンパーニャ州に定着し、水牛でできたモッツアレラ「モッツアレラ・ディ・ブーファラ・カンパーナDOP 」の産地として知られるように。

イタリアではチーズをそのまま食べるだけでなく、広く料理にも使われ、冷蔵庫には必ずチーズが入っているという。日本ではパルミジャーノ・レッジャーノなどが特に有名だが、イタリアではそれぞれの地域特有のチーズがあり、それが普段使いに愛され、パスタの上にかけるチーズはパルミジャーノだけとは限らない。また、イタリアではDOPチーズであっても、異なる種類のミルクを混ぜることが多いという。牛乳が足りない時には山羊の乳を足すなど、地元のチーズなんだからこんな風にしてもいいよね、というイタリアならではのフレキシブルな発想は、ワイン造りにも当てはまる。

同時開催されたイタリア産チーズ商談会では、16社のブースが60種類近くのチーズを用意し、特にパルミジャーノ・レッジャーノの熟成段階による味の違いが際立っていたのが印象的だった。他にも水牛や乳牛のモッツアレラ、瓢箪型チーズのスカモルツァ、ウォッシュチーズのタレッジョなど、さまざまなタイプのチーズが味わえ、イタリアチーズの幅広さと奥深さに触れられる素晴らしい空間だった。

マスタークラスでは、チーズ料理の第一人者でチーズ・プロフェッショナル協会幹事の小野孝予さん考案のチーズ料理の試食もあった。「水牛モッツアレラでジューシー&ミルキー!イタリアンぬた」は水牛モッツアレラを用い、オリーヴオイルを加え、イタリア風にアレンジした日本の「ぬた」。モッツアレラによって酢味噌の甘酸っぱさがまろやかになり、あっさりしてコクのある味わいになる。モッツアレラは豆腐に似たところがあるので、和風のアレンジとの相性もいいのだろう。

「ゴルゴンゾーラDOP ピッカンテとバナナのクロスティーニ」は、ゴルゴンゾーラの塩辛さとバナナの甘味が絶妙に合い、バナナとゴルゴンゾーラのもっちりした食感がよく合っている。ゴルゴンゾーラは、はちみつや胡桃、パンとも相性が良く、簡単に美味しいものが作れるため、常備しておきたいイタリアチーズのひとつ。

イタリアチーズの輸入は前年比で33%も伸びているという。ますますその魅力が認識されつつあり、料理にもワインにも合わせやすいイタリアチーズ。まずはひとつ、冷蔵庫に常備してみてはどうだろう。

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