11月20日(木)はボジョレー・ヌーヴォー解禁日。この日のためにボジョレーワイン委員会からお二人が来日し、ボジョレーの魅力を発見するプレスイベントが開催された。

ボジョレーはフランスのブルゴーニュの南に位置し、12のAOC(原産地呼称)が存在するワイン産地。ブドウ品種は赤はガメイ、白はシャルドネの2種類のみ。造られるワインは赤、白、ロゼの3種類で、新種のボジョレー・ヌーヴォーは赤またはロゼ。日本では圧倒的にボジョレー・ヌーヴォーが有名であり、日本へ輸出されるボジョレーの87%がボジョレー・ヌーヴォーだそう。とはいえ、ボジョレーには10のクリュ(AOC)があり、実はその品質が非常に高い。
来日したボジョレーワイン委員会のオリビエ・バドロー氏によれば、2024年に引き続き、2025年も厳しい年だったという。ボジョレーでは5のつく年は早熟といわれており、実際に2025年のブドウは早熟だった。極端な天候が続き、4月には35度を越える日が何度も続いた。6月にはかなりの雨が降り、雹(ヒョウ)にも襲われた。とはいえ7月は暑くなり、そのおかげで病原菌のリスクが止まり、ブドウの樹は健全な状態に保たれた。そんなこんなで2025年は生産量は20%ほど少なくなったが、フレッシュでとてもバランスが取れた質の良いワインになったそう。
最近のボジョレー地区は「ボジョレー・ヌーヴォー・ジェネラシオン」といって新世代の活躍を後押ししている。新世代の動きとして特に注目されているのがボジョレーの白。ブルゴーニュの南に位置し、白はもともとシャルドネのみという産地であるため、さすがに白ワインのポテンシャルが高い。これまでの白の生産量は5%程度だったが、世界的にも注目されているため、今後は15%を目指してやっていきたいそうだ。
また、クリュ・ド・ボジョレーといわれる10のAOCには特に優れた産地も多く、今後はその中でプルミエ・クリュの認定をしていこうという動きもある。今回テイスティングのコメンテータをつとめた世界的ソムリエの大越基裕さんも、「ワインの値段が上がっている中で、ガメイの需要はますます上がっている。クリュ・ド・ボジョレーには私たちがイメージしている以上にもっと素晴らしいものがいっぱいある。まだそれが日本の輸入の1割しか占めていないのは残念だ」と語る。
今回は2025年のボジョレー・ヌーヴォーを含む6種類のテイスティングが提供された。その中で特に印象的な3つをご紹介したい。
1つ目は2025年のボジョレー・ヌーヴォーのロゼ、「ヴィニョロン・デ・ピエール・ドレVignorons des Pierres Dorées」収穫した後すぐにプレスするダイレクトプレスという形をとった、淡い色のロゼワイン。驚くほど香り高く、キャンディのようなチャーミングで甘い香り。とてもフレッシュ、フルーティで一口飲むだけで元気になれる。華やかさとサッパリ感を併せ持ち、エビなど魚介の入ったフレッシュなサラダや、カブのマリネなどによく合いそう。
2つ目は白のボジョレー、「シャトー・デ・ジャックChâteau des Jaques 2023」こちらはシャルドネ100%でとても香り高く、サッパリして本当に美味しく、周りのジャーナリストもこぞって「美味しい!」と声を上げていた。少しオレンジっぽく、カリンや花の蜜を思わせる優しい味わいで、タラや白菜の入ったポン酢風味の鍋や、ゆず味噌のふろふき大根など、繊細な味わいの和食に合いそうだ。
3つ目は来日したボジョレー・ワイン委員会副会長、セバスチャン・カルディさんが造るワイン「シャトー・ド・コルセル・ボジョレー・ル・ペレオン Château de Corcelles Beaujolais 2023」熟したチェリーの香りがグラスから立ち上り、とても滑らかでふくよかな味わいで、果実味豊かで熟成感のあるワイン。タンニンも緻密に溶けこみ、余韻もながく、上品な味わいのワイン。大越さん曰く、噛みごたえのある鴨肉やホロホロ鶏など、脂が少なめのお肉に合うそうだ。
世界的に活躍するソムリエの大越さんはワインの表現だけでなく、ペアリングの想像力があっぱれという他なく、ここまで適切かつ細かく、聞く人の想像を掻き立てるように料理とワインの相性を考えられる人が存在するというのは驚きだった。食べることが好きな大越さんは、主にワインからではなく食事を食べながら、これにはどんなワインが合うかを考えることが多いそう。ワインというのは単に飲むものではなく、やはり食に合わせてこそであり、だからこそワインの世界では繊細な舌とこれまでの味わいをつなぎとめ、関連づけられる記憶力が求められるのだと痛感した。そんな大越さんも声を大にして勧めるボジョレーのクリュやボジョレーの白ワイン。ボジョレー・ヌーヴォーだけがボジョレーじゃない!というのは解禁日に真のボジョレーを愛する人が口を酸っぱくして語る言葉。クリュ・ド・ボジョレーもボジョレーの白も、日本の食卓に合いやすいので、見つけたらぜひ試してみてほしい。