11月2日、爽やかな秋晴れの空の下、ボルドー甘口ワインの生産者来日試飲会に合わせ、六本木のマクシヴァンにて、テイスティングランチが開催された。ボルドーの貴腐といえば甘口で、食後に楽しむデザートワインというイメージが根強い中で、今回は前菜からデザートに至るまで、和風の料理と合わせてみるという試みだった。和食と白ワインならまだしも、甘口ワイン?と思われそうだが、「貴腐ワインには独特のうまみがあるため、うまみがある料理に合うんです」とマリアージュを考案した、マクシヴァンのオーナーソムリエの佐藤陽一さん。日本ではまだ身近な存在とは言えない貴腐ワインとは、そもそもどんなものなのだろう。
ボルドーの貴腐ワインは著名なソーテルヌだけで生産されているわけではなく、甘口ワインのAOC産地は10も存在するという。ルピヤック、カディヤック、バルザック、セロンなど、様々な産地で毎年貴腐ワインは生産されており、今年も収穫が無事終わったそうだ。貴腐ワインの品種は白ブドウのセミヨンがメイン、それに20%程度のソービニヨン・ブラン、少しのミュスカデルをアッサンブラージュして造られる。普通のワインとの大きな違いはブドウに貴腐菌がつき、それを繁殖させていくことだ。
今回のテイスティングで学んだことは、貴腐ワインはスパイシーでエスニックな料理だけでなく、うまみやほんのりと甘みのあるものにもよく合うということだ。例えば、やさしい甘さがある柿の胡麻和えや、ほんのりとした甘みを感じる蕪の煮付けに黒胡椒をまぶしたものに、甘さ控えめで、レモンの蜂蜜漬けを思わせる、さっぱりめの「シャトー・ルピアック・ゴーディエ(Chateau.Loupiac Gaudiet )2015」が見事に合っていた。また、塩味が効いてはっきりした味わいの金時豚のミルク煮には、しっかりと甘い味わいの「シャトー・ミラー(Château Myrat)2009」が絶妙に合う。ミルクと貴腐ワインというと不思議な気もするが、あたたかいハチミツ牛乳の味わいを思い起こすと、確かにぴったりくるのがよくわかる。食後には何度も裏ごしされて丁寧に作られた栗きんとんが用意され、まさに貴腐にベストマッチという組み合わせ。実は干し梅とも絶妙に合う味わいなので、和食との相性は意外に奥が深そうだ。類い稀な気候条件がもたらす神の恩寵のような黄金のワイン。その美しく豊かな味わいと私たちを遠ざけるのが消費者側の固定観念でしかないのなら、まずは私たちが自由になって、手にとった1本と気になるマリアージュを試してみたらどうだろう。そうした機会を重ねていくうち、日本でももっと気軽な貴腐ワインが流通し、日常的に楽しめる日が訪れるかもしれない。
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