今年も3月7日~10日にアジア最大級の食の祭典、FOODEX JAPAN 2017が千葉の幕張メッセで開催され、8万人以上が来場した。ビジネスチャンス獲得のため、毎年世界中から人が集まるFOODEXだが、広大なブースの中で自社商品を見つけてもらうには相当な努力が必要だ。仕事で来場するとはいえ、美味しそうな場所に吸い寄せられるのは人間の性分らしく、おせち料理や揚げたてのさつま揚げ、焼きたてのピザやハワイアンフード、カンガルー肉のステーキを提供するブースの前には人々が群れをなす。一方でただ商品と人が配置されているだけのブースはそっけなく人が通り過ぎてゆく。フランス企業ブースも例外ではなく、今回はほとんどがワインの出展だったこともあり、関係者以外は寄せ付けないオーラを発しているかのようだった。
最後は、ボルドーの有名産地の奥、ベルジュラックで造られるワイン。ベルジュラックは日本での知名度こそ低いものの、白ワインが特に素晴らしい。ベルジュラックのシャトー・プルヴェールは1923年から続く大規模なメゾン。「僕の祖父が始めた家族経営のメゾンで、今は甥も頑張ってます」と生産者のフランシスさん。「シャトー・プルヴェール Château Poulvère 2015」の白は100%ソービニヨン・ブランだが、驚くほどさわやかで春の到来を告げるような心地よさ。青リンゴに少しレモンの酸味を足したようなフレッシュな味わいがあり、ほんのりと甘みも感じ、気分がちょっと上向きになる。ベルジュラックにあるモンバジヤックというAOCでは甘口ワインを造っている。貴腐菌がついて糖度が非常に上がったブドウを用い、発酵を途中で止めることで、ワインの中に糖分を残したままにするという。セミヨン60%、ミュスカデ30%、ソービニヨンブラン10%で、全て貴腐ブドウ使用というモンバジヤック「プレスティージュ Prestige」は、あんずのようなほどよい甘さで軽やかだ。「同じボルドーの貴腐と言ってもソーテルヌとはテロワールが違います。ソーテルヌに比べてモンバジヤックはもっとフルーティで飲みやすい。ソーテルヌは一杯飲んだらもう十分。モンバジヤックはもう一杯欲しくなる。メロンとか、ロックフォールやブルビのチーズに合わせるのも最高だし、夕方テレビの前でちょっと一杯っていうのもいいんですよ」とフランシスさん。