11月21日、東京、麻布十番のリストランテ・ディ・ジョルジョにて、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノの特別ランチ会が開催された。イタリアワイン ジャーナリストの宮嶋勲さんの解説のもと、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ協会が用意した数多くのワインを試飲できる素晴らしい会だった。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノは、イタリア、トスカーナ地方のフィレンツェやシエナより南の産地で造られている。同じトスカーナワインのキャンティ・クラシコは年間3600万本生産されているのに対し、こちらの生産量は年間700万本でブドウの栽培面積は約1300ヘクタール。ワイナリーは78軒と少なめだ。宮嶋さんの印象ではそんなに沢山あったかな?というくらい、こじんまりした産地だそう。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノは16世紀頃からその高貴な品質が知られ、アメリカ大統領のトーマス・ジェファーソンも名指しで注文するなど、多くの偉人に愛されてきた。現在の品種規定は、サンジョベーゼを最低70%使用、残りはカナイオーロやコロリーノなどの土着品種、カベルネやメルローなどの国際品種の使用が可能となっており、最低2年は熟成させる。
宮嶋さんによれば、現在のヨーロッパでは「サスティナビリティ」は重要な合言葉であり、ワインからファッションに至るまで、避けて通れない用語だそう。生産者のうちの70%以上はすでにサスティナビリティ・プロジェクトに投資しており、太陽光発電にも取り組んでいる。そんなサスティナビリティの先駆者の生産者、サルケートはこだわりが強く、電線すらないという。こちらのワイン、Salcheto Nobile di Monteplucianoはサンジョベーゼ100%。チェリーやプラムのようなフローラルな香りが特徴的で、味わい豊かでとても凝縮感がある。上品さと凝縮感を併せ持ち、お肉に非常によく合いそうだ。
ジョルジュさんがこの日のために用意したメイン「ピンクの塩の上でオーブン調理した仔牛の切り身とフライドポテトの餃子」と合わせたのはVino Nobile Contucci 2017。タンニンがしっかりめでわりと重厚感があり、とてもフルーティ。表面を香ばしく焼き上げた柔らかい仔牛によく合っている。Poliziano Nobile di Montepluciano 2019も、パワフルで凝縮感があるが、タンニンはわりとすっきりしていて飲みやすく、上品な味わいの仔牛に最適だ。
様々な試飲を通じて、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノに抱いた印象は、エレガントで、しっかりした味わいがあるものの、タンニンは濃すぎないという絶妙なバランスだ。そのため、お肉料理など、食事と非常に合わせやすい。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノの生産量のうち70%は輸出向け。そのうち日本への輸出は1.5%とまだ少なく、巷で目にする機会はそう多くないが、エレガントで凝縮した果実味と、ほどよいタンニンが効いており、本当にいいワインで幸せ気分に浸りたい時にぜひともおすすめしたいワイン。
by Miki IIDA