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もっとあなたを、驚かせたくて。帝国ホテルのオンラインモール

帝国ホテルは11月3日にオンラインモール ANoTHER IMPERIAL HOTELをオープンした。タワー館の閉館や、2026年に京都に30年ぶりにホテルをオープンさせるなど、まさに変革期を迎えている帝国ホテル。「もっとあなたを、驚かせたくて」をコンセプトにしたモールでは、ここでしか巡り会えない良いものや良いことを、日本が誇るおもてなしの心で用意したもの。ホテルのスタッフが日本各地に実際に足を運んで選んだ質の高い37ブランド、100製品がラインナップされている。生産者のブランドストーリーを大切にし、作り手の思いやストリーがわかるのも特徴だ。帝国ホテルに長年務める熟練のシェフやソムリエ、バーテンダーなどがアンバサダーとなって生産者とともに商品開発に関わるなど、既存のホテルという枠組みを超えたスケールの大きな取り組みだ。

プレス向けイベントでは、オリジナル商品を手がけたアートディレクターの柿木原政広さんが開発秘話を語ってくれた。広島出身の柿木原さんにとって、帝国ホテルは東京のど真ん中にある憧れの場所で、ハレの日に使う夢のような場所だった。そんな彼がホテルのオリジナルグッズを手掛けることになったとき、光栄だけれども怖いような、憧れの人と仕事をする嬉しさとともに、憧れだからこそ背筋をピンとして最高のものにしなければという想いがあったそう。グッズには帝国ホテルのツアーで体験して感じたことを散りばめており、メインのモチーフとなるのは正面ロビーの天井にある、バラを表現している8角形のシャンデリア。そして帝国ホテルのシンボルともいえるロビーの装花は、おもてなしの花だけでなく、台をあえて描くことで、それを支えるスタッフの気持ちを台で表現したという。帝国ホテルは建築も魅力的だが、人との関係性をどうつくるかを大切にしていると感じた、と柿木原さん。外から見た帝国ホテルは少し敷居が高いとはいえ、実際には品があって親しみやすい、そんな雰囲気をデザインで表現したそうだ。

今回のラインナップの中には、帝国ホテル、オールド・インペリアル・バーの副支配人である井戸さんが静岡の茶園、カネス製茶と共同開発した日本茶のボトリングティもある。カネス製茶の小松さんによれば、ボトリングティは日本茶を嗜好品として味わうもので、ボトルからグラスに注ぐだけで質が高く、テロワールの味わいや本物の深みのある日本茶が味わえる。IBUKI Bottled tea「Utsuroi」は出汁のような強烈なうまみのある日本茶で、後味の余韻が驚くほど長い。こちらは高品質な日本茶の産地として知られる静岡、川根産のやぶきた品種を使用。新茶100%で収穫は手づみ。日本茶の生産者はここ10年ほどで半分以下となり、家庭での消費量も大きく減っているという。そんな中で、現代に合わせたお茶の楽しみ方を再定義したい、本物の日本茶を後世に残したいという小松さんと、味に妥協しないプロバーテンダーの井戸さんが何度も何度も静岡でテイスティングを繰り返し、妥協せずに作った逸品だ。

他にも一風変わった商品が、凍眠酒という日本酒だ。こちらは最新の冷凍技術を使い、搾りたてでフレッシュな生酒を冷凍保存させたもの。生酒は搾りたてで非常に美味しいものの、保存が難しいために賞味期限が短いため、酒蔵で飲むか、保存のために火入することが求められるという。この技術では瞬時に水分とアルコールが冷凍されるため、生酒の品質を全く損なうことなく、自宅で解凍することで絞りたてのお酒の味が楽しめる。しっかり解凍してから飲んでもいいし、解凍しながら少しずつ味の変化を楽しむのも楽しいそうだ。試飲した京都、松井酒造の日本酒は二つの酒米を別々に醸造して最後にアッサンブラージュしたもの。とても柔らかく、甘みやまろみがあって香りも豊か。試飲した3種類とも、これが日本酒?と思うほど香りや味わい、余韻が凝縮されていた。

様々なコラボレーションの中でも目玉といえるのが、帝国ホテル東京の杉本雄料理長が、菊乃井 三代目の村田吉弘氏とともに創作したカレー。「今までの帝国ホテルに期待しているのとは違うもの。帝国ホテルってこんなこともするの?と思われる企画がしたかった」と杉本シェフ。二人は帝国ホテルの会員向けの会報誌の対談を通じて意気投合し、今回の企画を杉本シェフが打診した際、二つ返事で快諾されたという。帝国ホテル初代会長の渋沢栄一にまつわるカレーを作りたいという気持ちがあった杉本シェフは、渋沢栄一の出身地、埼玉の深谷の名産であるネギを丸ごと一本使ったカレーを開発。ネギの白い部分だけでなく、緑の部分からオイルを抽出してルゥに溶かし込んでいくことで、まろやかで香り高いカレーになった。「今回の取り組みを通して、カレーは実はフランス料理の考えをもとに作られていた、きわめてフランス料理のテクニックに近いものだというのが大きな気づきだった」と杉本シェフ。

村田シェフの「雲収赤カリー」はパプリカに麹を入れて作った味噌とトマトを使ったで、香り高くスパイシー。さすが菊乃井という味わい深さ。日本料理のシェフがカレーを作ることに対して抵抗はなかったのかという質問に対し、「ジョエル・ロブションが日本で一番興味があるのはカレーだと言った。ソースがメインになった料理はこれしか見たことがないから」と村田シェフ。杉本シェフがグリーンのカレーを作るというので、赤をつくることにしたそうだ。帝国ホテルと菊乃井といえば国内トップの一流店という認識だが、あえてカレーに挑戦することで、より一般の人に響くものを作りたいという気持ちがあったそう。カレー以外にも鰆や海藻を使った料理など、様々なコラボに挑戦中の二人。「本館が完成する2036年までに二人で色々作っていけたらなと思う」と村田シェフ。

厨房に立つだけでなく、全国の産地を訪れ、生産者と話していく中で、気候変動による収穫の変化や、後継者問題など、生産者たちの置かれた厳しい現実も身に染みて感じている杉本シェフ。「食材を頂いて加工して届けることをずっとやってきたとはいえ、私たちが関わっているのは食材の一生で見ればほんの数%にすぎない。だからこそオンラインモールを通じて生産者とつながり、商品に込められた想いをしっかりキャッチして、帝国ホテルのお墨付きとして出すことで、ビジネスとして循環していきたい。こうした取り組みがまたひとつの文化となって、サプライチェーンの中で重要な位置を占めていくと思う。帝国ホテルが始めたバイキングのように、必ず後世に評価される取り組みだと思う」と語る。

銀座の名店、空也もなかとコラボした、最中の皮の中にマドレーヌ生地を詰めて焼き、自分であんこをのせて食べる最中も絶品だ。「勝負土産におすすめ」と杉本シェフのお墨付き。

オンラインモールの商品はホテル内では販売しておらず、オンラインのみの販売となる。

AnOTHER IMPERIAL HOTEL 公式サイト

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