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ボルドー赤ワイン アッサッンブラージュワークショップ Atelier d’assemblage Vin de Bordeaux

ボルドーワイン アッサンブラージュワークショップ

ひとくちにボルドーワインと言っても、産地がどこかで味わいは大きく変わる。ボルドーの中心を流れるジロンド川はこの地を左岸と右岸に分ち、赤ワインのタイプも違う。左岸で有名なのは格付けシャトーの並ぶメドックで、主にカベルネ・ソービニヨンを使用。右岸ではサン・テミリオンが筆頭格で、主にメルローを使用。

 

では自分の好きなタイプはどれ?と思ってみても、ハッキリした答えに辿り着くのは難しい。異なるブドウ品種をアッサッンブラージュ(ブレンド)するボルドーでは、数%の比率が味に大きな違いをもたらすからだ。10月20日、東京の白金倶楽部にてボルドーワイン委員会主催のアッサンブラージュ・ワークショップが開催された。それぞれの品種特性を理解した後、各テーブルで実際にアッサンブラージュ体験をするというものだ。収穫が終わったばかりのボルドーから、著名なエノログ(醸造博士)のヴァレリーさんが、醸造指導の合間を縫って来日し、品種特性やボルドーのテロワールについて解説してくれた。「現在新世界でも使用されているメルローやカベルネ・ソービニヨンはボルドー原産。ボルドーで一番多く栽培されている黒ブドウはメルローで右岸に多く、粘土質や粘土石灰質の土壌に適しています。早熟なので収穫も早く、今年は9月下旬にはほぼ収穫が終わりました。栽培自体はしやすいものの、気候の変化や土壌の水分量の変化に敏感です。一方カベルネ・ソービニヨンは左岸に多く、メルローより水分が少ない土壌でも栽培可能で、成熟はゆっくり、収穫も遅め。中間に位置するのがカベルネ・フランと言えるでしょう。」

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ボルドーではこれらのブドウは品種別に収穫され、アッサンブラージュされる日までは基本的に別々に醗酵、熟成させる。こだわりの強いシャトーでは、テロワールごとに味わいも異なることから、同じ品種でも特別な畑のものは別々に醗酵、醸造することも。アッサンブラージュの時期になるとシャトーの責任者たちは原酒の試飲を繰り返し、今年はこういう比率で、と決定する。そのため同じシャトーでも年やブドウの質によって微妙に配合比率は異なってくる。

 

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それぞれの品種特性の解説後、2014年の原酒を試飲し、特に驚いたのがメルローの味わいだ。メルロー100%というワインを見つけるのは意外と難しく、実際にそれを味わうと、メルロー特有だと思っていたあのやわらかさやフルーティさはあるものの、塩気の足りない料理のようだ。優しい、けれども何かが足りない。カベルネ・フランは乾燥したミントのような香りで、フレッシュな味わい、後味もスッキリ。メルローよりタンニンは強く、カベルネ・フラン100%のワインがあるのも頷ける。カベルネ・ソービニヨンは熟したブラックベリーの香りで、口に含むとミントのようなさわやかさがあり、タンニンはよりしっかり。最後に今ボルドーで見直されつつある固有品種のプティ・ベルド。こちらはカベルネ・ソービニヨンより成熟が遅く、補完的な役割を担う品種で数%しか使われない。ビーフジャーキーのような香りでタンニンも荒々しく、さすがにプティ・ベルド100%は厳しいだろうなとわかる。さて、これらをどうブレンドしたら最良のワインができるのだろう?


「アッサンブラージュの基本は自分が好きなワインを想像すること。そこにいかに自分で近づくかです」とヴァレリーさん。我々は右岸のワイン造りに挑戦だ。右岸の基本比率はメルロー70%、カベルネ・ソービニヨンとカベルネ・フランのブレンドを30%まで、プティ・ベルドーは使用しない。まずはメルロー70%、カベルネ・ソービニヨン15%、カベルネ・フラン15%という無難な比率でアッサンブラージュ。口に含むと柔らかい、が、柔らかすぎるように思う。メルローは女性的な印象を受けることが多いが、これでは薄っぺらい女性という印象だ。おそらくカベルネ・ソービニヨンのパンチが足りないのではと、2回目はそちらの比率を5%だけ増やし、メルローは70%のまま、カベルネ・ソービニヨン20%、カベルネ・フラン10%に。こちらはまさにサン・テミリオンを思わせる味わいで、柔らかいけれども後味は締まりがあって、素晴らしいワインとなった。3回挑戦した中でも前述の比率は抜群で、あまりに美味しいので最後まで飲みきろうと、全員が「自分のワイン」のグラスを片時も離さなかったほど。数字にするとたった5%や数%でも、カベルネ・ソービニヨンやプティ・ベルドのように濃いめの品種を少し足すだけでワインの味わいは驚くほど変化する。「アッサンブラージュは自分好みのワインに近づけること」ならば、自分好みの比率を一度しっかり知れたなら、その後のワイン選びで失敗する確率はぐんと減るのでは。シャトーの格やメダル受賞も購入の際の基準になれど、自分の手でも比率さえわかればこんなに立派なワインがつくれてしまう。これは!というワインに出会った際には是非アッサンブラージュ比率をメモすることをおすすめしたい。

 

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