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レストラン・キガワ 紀川シェフ Michihiro Kigawa

restaurant Kigawa

叩き付ける雨の中、助けを乞うようにドアを開けると、別世界が待っていた。白を貴重としたこぢんまりとした店内は外のざわめきとは対照的な落ち着きがあり、心まで穏やかになってゆく。2011年、モンパルナスの南に »Restaurant Kigawa »をオープンさせたのは紀川倫広さん。

 

「僕のスタイルはクラシックなフレンチです。ボリュームも味も、バターもしっかり。それをタンニンの効いたワインと合わせて、というのがフランス料理。お腹ペコペコで来てもらい、しっかり食べたという気持で帰ってもらえればと思っています。」パテ、フォワグラ、ロティ、ジビエ・・・フランスならではの食材を活かした料理は正当派フレンチを好むフランス人に支持されており、3年間ハトだけ食べに通い続ける常連客もいるという。

「フランスでお店を出せたことの良さというのは食材、フランス料理、それを愛してくれるお客さんという3点に尽きると思います。食材は毎週ランジスの卸売市場に買いに行っています。フランスならではの食材を自分の手にとって選び、それをシンプルな調理でお客さんに提供できるという喜びは日本では味わえません。この3点の他には日本に勝ることはないと思いますが・・・」

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10代後半でフレンチに興味を抱き、辻調理師専門学校に通った紀川さん。大阪のフレンチで働き、2000年に渡仏してからはフランス人シェフの下で働いてきた。「ずっと雇われシェフを続けていくしかない、パリに自分の店を持つだなんて絶対に実現不可能だと思ってました。」では一体どうしてそんな夢が現実に?「以前働いていたリヨン駅近くの店のオーナーシェフが、もう辞めようとして、店を売りに出そうとしたんです。それでお前が買わないかって。もちろんそんなお金はないと言いましたが、常連さんたちは君が続けるならお金を貸してあげる、続けなさいと言ってくれたんです。その話がかなり進んだあとに実は騙されていたとわかりましたが、それでも常連さんたちは「じゃあ他の場所で店をやったらいいじゃないか。それでも貸してあげるから」って。それでパリを走り回って物件を探して、一生分の借金を抱えて妻と一緒に小さな店を持つことに決めたんです。その人たちが喜んでくれる店ができたらいいなって。」

オープンはしたものの、東日本大震災の時期とも重なり3ヶ月は閑古鳥が鳴いていたという。「その頃近所のシェフ達が食べに来てくれて、美味しいねって言ってくれたんです。それから彼らの店が満席で入れない時にお客さんを僕の店に送ってくれるようになったんです。日本では考えられないですよね?だから彼らには本当に頭が上がりません。」自分の店が今賑わうのは近所のシェフたちのお陰でもあり、これまでフランス料理界で戦ってきた日本人シェフの軌跡あってこそと語る紀川さん。お客さんが店を発つ時も声をかけ、最後までしっかりと見送っている。食材も人も店内も、丁寧に、大切に扱っているからこそきちんとした常連客がつくのだろう。「これからの目標?もっとよくしていきたいです。もっときれいに、熱いものはより熱く、冷たいものはより冷たい状態で提供し、お客さんが楽しくしてくれたらいいなと思っています。」穏やかな空気の中、落ち着いて上質なフレンチを食べたい日には是非 « Restaurant KIGAWA »を目指してみてほしい。

Restaurant Kigawa レストラン・キガワ

住所 : 186, rue du Château 75014 Paris
電話:01 43 35 31 61
営業時間 : 12時~14時 19時~22時30分
メトロ : 4番線 Mouton-DuvernetまたはAlésia
値段 : 平日ランチ メイン+前菜またはデザート 22€
前菜+メイン+デザート 28€

お昼のコース43€  夜のコース47€
日本からでもインターネットで予約可能(日本語)

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