2月中旬、在日イタリア商工会議所主催のイタリアンDOPチーズのセミナーが開催された。食文化に対する強いこだわりをもつイタリアは、EU加盟国の中でも突出して原産地呼称の認定を受けた製品が多い国である。DOP、IGPなどを合わせると818もあり、2位のフランス(618製品)を大きく引き離している。DOPというのは、イタリアの原産地呼称制度(Denominazione di Origine Prottetta)のことで、DOPには昔ながらの方法が細かく規定されており、チーズ作りのノウハウは父から子へと継がれていく。
イタリアチーズというと高級なイメージだが、その理由は全ての工程が手作業で丁寧に作られているからだという。世界では工業的なチーズが多く作られている一方、イタリアのチーズ作りでは機械すらほとんど使わない。DOPでは牛の品種もしっかり規定されており、異なる品種のミルクを混ぜることも禁止されている。また、工業的なチーズと特に異なる点は、着色剤を一切使わないこと、ほとんどのDOPチーズが生乳でつくられており、熱殺菌が禁止されていることである。ドイツやアメリカでは生乳でのチーズ作りは禁止されているというから対照的だ。
今年の2月1日、日本とヨーロッパの貿易をスムーズにするEPAが発行された。それにともない、ワインやチーズの価格が徐々に下がることになる。DOPチーズの日本への輸出量の9割は世界的に人気のトップ5、グラナ・パダーノ、パルミジャーノ・レッジャーノ、モッツアレラ・ディ・ブッファラ・カンパーナ、ゴルゴンゾーラ、ペッコリーノ・ロマーノで占められる。現在日本に輸入されるチーズの価格のうち30%が関税だというから、関税が完全撤廃されれば随分と購入しやすくなるだろう。とはいえ関税が撤廃されるには16年もの歳月が必要で、実際ここ2−3年では数%しか下がらない。消費者が恩恵を受けるにはまだまだ時間が必要だ。
面倒な作業があっても味わいを守るために簡略化しないという姿勢を守り続けるのは簡単なことではない。とはいえ、じっくりと丁寧に作られ、長期熟成されたチーズを味わった時の繊細な味わいは格別である。DOPマークがついたイタリアチーズがいつものチーズより数百円高くても、伝統的な製法による味わい深さが保証されているのなら、試してみる価値があるのでは?
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