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ビストロのシンボル  トーネットの椅子 La chaise Thonet

パリのビストロでまっ先に目につくものといえば、あちこちに置かれた木の椅子でしょう。ビストロが発明されたのはパリなのですが、この椅子は違う国からやってきました。

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トーネットの椅子は、高級なビストロでも、庶民的なビストロでも 見かけることのできる唯一の椅子。

 パリのカフェのこの椅子に、幾千の人たちが腰をおろし、また今後も座り続けていくのでしょう。ビストロの椅子の発明家、ミッシェル・トーネットは、一目見ただけでパリのカフェを思い起こさせるような象徴を創り出したのです。とはいえ、それが生まれたのはウィーンのカフェ。トーネットは、1685年にルイ14世によってフランスから国外追放されたプロテスタントの子孫でした。ドイツに生まれ、高級家具師となった彼は、1841年にパリで、蒸気によって木を曲げる方法の特許を申請したのです。

この椅子は、ブナの木の板を蒸気で蒸し、曲線を描いた型に入れて曲げ、それからニスを塗って作っていきます。非常にシンプルな作り方もトーネットの椅子の特徴です。椅子の後ろ側の脚と背もたれは、一続きの木でできており、丸い椅子の台座と、前側の椅子の脚をそれにとりつけます。全てはねじとボルトで結合されてゆくのです。

椅子を出荷する前に、ミッシェルの息子のオーギュスト・トーネットは
頑丈さをテストするために、工場の屋根から椅子を投げる習慣があったと言われています。つまり、今でも成功を収めているこの椅子は、たんなる流行によるのではなく、本質的な質の良さによって愛されつづけているのです。頑丈で、しなやかで、かつ軽く、店をしまうときには積み重ねられる。この椅子はカフェのパトロンの期待にしっかりと答えた、というわけです。それにアール・ヌーヴォーのシンボルであり、輝かしい成功をおさめた美しいフォルムが、お客さんたちに高く評価されてきたのです。

 トーネットの子供達は、ブナの木を曲げることで、他にもビストロの象徴的な家具を作ってきました。例えばテーブルや、カウンターでちょっと腰かけるための木のスツール、それにペロケとよばれる有名なコートかけなどは、今でもビストロの雰囲気を形作るのに充分貢献しています。

オルセー美術館にある、トーネットの作品。

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