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フランスのミシュラン・ガイド 2021 気になる中身は?

 フランスのグルメ好きは毎年1月になるとミシュランの話題で持ちきりになる。星を新たに獲得したり、失ったレストランについて誰もがジャッジを下し、意見を述べるのだ。しかし今年のミシュラン発表は例年のインパクトに欠けていた。

 コロナ対策のため、星を獲得したシェフたちにインタビューできる、美食ジャーナリストが100人程度集まる記者会見は中止となった。今年のセレモニーはエッフェル塔にて無観客で開催された。

 2020年には6ヶ月にわたってレストランが閉店を余儀なくされたにもかかわらず、今年のミシュランは昨年より多くのレストランに星を与えている。合計638軒の店が掲載され、星つきのレストランは2020年に比べて10軒増えた。つまり普段より短期間に、ミシュランの審査員は昼食の次は夕食に、とせわしなく動き回っていたというわけだ。ミシュランの主人、グウェンダル・プレネック氏は外国の同僚たちにもお世話になったと述べている。

 ミシュランはマルセイユにあるアレクサンドル・マツィアの店、AMに3つ星を与えることで、イノベーションの姿勢を示した。この小さな店は、これまでの非常に豪奢な3つ星の店のイメージを覆すことに貢献した。

 パリでは星を減らしたレストランもいくつかある。パリで最も古いレストランのひとつ、パレ・ロワイヤルにあるル・グラン・ヴェフォールは2つ星を失った。シェフのギイ・マルタン氏は顧客を得るために料理の価格を半額にするという試みをした。というのも、コロナによって外国人観光客を失った高級レストランは、高すぎるという理由でフランス人に敬遠されたからである。外国人観光客が来れないなかで、高級店の経営は非常に困難な状態にある。

パレ・ロワイヤルのグラン・ヴェフォール

 アトリエ・ジョエル・ロブションの2店舗(パリ6区と8区)がそれぞれ1つずつ星を失ったことは、多くの専門家にとって不当なことに思われた。彼らにとって、ミシュランはフランス料理界の偉大な巨匠から星を奪うことで、単に話題性を高めているように映るのだ。というのも、70年代にはフランスで最も売れていた本だったミシュランは、すでにその面影を失っているからだ。そのため今では、インターネットやSNSで、ミシュランについて話題にしてもらう必要がある。また、トリップ・アドバイザーと提携したり、予約時に手数料と取ったり、星付きでないレストランに対して広告ページを売ることで地位を保っているという状況がある。

 例年に反して、2021年はパリで星を獲得した日本人シェフはいなかった。とはいえマリ人の母をもつフランス生まれのモリ・サコー氏のおかげで日本の存在を感じることができる。「若きシェフ賞」を受賞した彼は9月からパリ14区にモスケ(MoSuke)というお店を構えている。モスケという名は、織田信長に使えた唯一のアフリカ出身の侍、弥助に由来しているという。「私の料理はアフリカと日本の影響を受け、フランスの最高の食材でできている」とモリは語る。彼の料理は3カ国のマリアージュだといえるだろう。

モリ・サコー氏の料理
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