11月11日は生ハムの日。それにちなんで、日本生ハム協会主催のイヴェントが表参道のレストラン、バンブーで開催された。日本生ハム協会は、日本に本物の生ハムを広げる目的で4年前に発足した。このイヴェントの主な目的は、生ハムの違い味わって体感してもらうこと。生ハムというと目を輝かせる人は多くても、産地によって味わいが随分と異なることを知っている人はそう多くないだろう。

ひとくちに生ハムといっても国や産地によって味わいは違い、製造工程や熟成にかける年月も異なっている。日本では40年前から、刺身のように生で食べる豚肉のことを生ハムと呼んできたそうだが、それは「イタリアやスペインなどで作られる本物の生ハム、つまり長期熟成ハムとは似て非なるもの」だと代表理事の桜丘盛一さん。会場には日本産の生ハム、フランス産、イタリア産、ドイツ産のスモーク生ハム、そしてスペイン産など、様々な生ハムのブースがあった。「日本での年間生ハム消費量は一人あたり21グラム。でも今日は一人当たり200グラムをご用意しました」との桜丘さんのコメントに一同驚きを隠せない。たった1日で年間消費量の10倍もの生ハムを用意してもらえば、さすがに違いに気づいてくる。イタリア産、パルマの生ハムはカットの薄さが特徴的だ。まるで花びらのような薄さでカットされた生ハムは、口当たりもさらっとしており軽やかでいくらでも食べられそうだ。この薄さは塩味を和らげるためだといい、確かにイタリア産のハムは塩味が強めなようである。ドイツ産のスモーク生ハムはスモーキーな香りが口いっぱいに広がる優しい味わいで、後引く美味しさ。チーズと非常に合いそうだ。
人生を変えるほどの生ハムがあるという。それは一体どんなものなのか、そんな疑問を抱いて会場に足を踏み入れた。いつまでも消えぬ余韻に浸って帰宅しながら、なるほどと合点がいったように思う。世界にはこれを見ずには死ねないという景色や、これを食べずに死んではいけないというほど美味しいものが存在するが、ハモン・イベリコ100%・デ・べジョータの生ハムもそのひとつといえるのだろう。どんなに辛い時があっても、その喜びを味わったなら人生も悪くないと思え、もう少し長生きしたくなる。人生の喜びや豊かさを教えてくれる感動的な食が世界には存在する。それを育んできたスペインの食文化の深さとあたたかさが垣間見えた夜だった。