paris-bistro japon

イタリアワイン トスカーナ地方のキアンティ・スーペリオーレ

4月18日、東京の明治記念館でキアンティDOCGワイン・デイのマスタークラスが開催された。今回の講師を務めたのは、キアンティワインアンバサダーのルカ・アルベスさんと、イタリアワイン ジャーナリストの宮嶋勲さん。

日本でも知名度の高いイタリア、トスカーナ地方で生産されているキアンティは、世界に多く輸出されており、70%が輸出向け。キアンティはシエナやフィレンツェ近郊の広大な地域で、7つのサブゾーンが存在する。

イタリアは世界最大のワイン生産国だが、イタリアでワイン造りが始まったのは、地中海を頻繁に行き来していたギリシャ人がブドウ栽培の方法を教えたおかげ。ギリシャ人はイタリア南部を植民地化し、ギリシャ文明はワインが中心的役割を果たしていたため、トスカーナ地方にも大きな影響を与えていった。ギリシャが古代ローマ文明に吸収されるとワイン造りはより実践的になり、ワインは重要な商品となっていく。古代ローマの崩壊後も、ワインはキリスト教においてキリストの血を象徴するものとされ、僧院でのワイン造りが続いていった。

時を経て16世紀。フィレンツェはルネッサンスの時代を迎え、ヨーロッパで一番栄える都市となった。芸術だけでなく商業、経済、金融の中心地となり、世界で最初の銀行も誕生。この頃ワインのギルトもでき、オステリアが盛んになって、ミケランジェロやレオナルド・ダヴィンチもいきつけの店で芸術談義をしていたという。当時、ワインはすでに食卓に欠かせない食品の一部であり、貴族だけでなく、貧しい人もワインを飲んでいた。その頃キアンティは優れた産地として認識されるようになり、もともとは白ワインで知られていたものの、メディチ家の時代になると赤ワインで著名になっていく。

そして1716年にメディチ家のトスカーナ大公コジモ3世が、最初のワイン産地の線引きをし、生産方法も決め、管理する組織を設立。その後イタリアの二代目の首相も務めたベッティーノ・リカソーリ男爵が、キアンティの中心品種はサンジョベーゼであると決めた。それ以前のキアンティでは、一つの畑に異なるブドウ品種が混色されることもあり、さまざまな土着品種をブレンドし、主役の品種は決まっていなかった。

現在のキアンティのブドウ品種は、70%以上がサンジョベーゼで、30%までカナイオーロ・ネーロやコロリーノ、マルヴァジア・ネーラなどを足すことも可能。キアンティは収穫後の翌年3月1日から出荷が認められているが、キアンティ・スーペリオーレは収穫の翌年9月1日から。リゼルバは最低2年の熟成が必要だ。キアンティ・スーペリオーレは1996年にできたカテゴリーであり、アンナータと呼ばれるベースのキアンティよりもより厳しい規制かかった、キアンティとレゼルバの中間に位置するカテゴリー。キアンティには7つのサブソーンがあり、スーペリオーレにはサブゾーンを明記することができないものの、今回は7つのサブゾーンで造られたスーペリオーレを試飲した。

特に素晴らしかったのはキアンティの中でも注目の産地、キアンティ・ルフィナ・スーペリオーレDOCG 2020で、コクがあり、ワインの濃さ、シルキーなタンニンとエレガントさが絶妙なバランスだ。キアンティ・ルフィナはコジモ3世の時代から言及されている歴史ある産地で、フィレンツェの近郊。最近は温暖化の影響もあって、フレッシュかつ厳格で長期熟成能力の高いワインが造られているという。キアンティの最大の特徴はどんな食事にも合わせやすいこと。ビステッカやサラミまで、全ての食事にこれ一本で合わせられる。試飲したワインも酸とタンニンのバランスが優れているものが多く、滑らかでエレガント。キアンティというのは「ピッツア」や「マンマ」同様に、世界で最も知られているイタリア語の単語のトップテンに入るという。その響きを聞いただけでも胸が高鳴り、イタリア気分が盛り上がる、トスカーナ地方の美しさや文化と切っても切れないキアンティ。イタリアワインを何か一本飲んでみたいという方は、ぜひDOCGキアンティを手に取ってみてほしい。

Quitter la version mobile